書籍版「淡海乃海」第二巻【あらすじ・見所・特典・感想】
周辺諸国との戦いが激化していく中で、とうとう大名六角家との関係に終止符が打たれる。
この事により、朽木の行く末が定まる事になる…。
題名:淡海乃海 水面が揺れる時 -三英傑に嫌われた男、朽木基綱の逆襲- 第二巻
著者 : イスラーフィール
絵 : 碧風羽
あらすじ:元服し小夜との結婚式も終えた主人公「朽木基綱」。周辺諸国の状況は、目出たい事など関係なく動いて行く。
新婚早々、戦に出るなど忙しなく働き、朽木家の窮地を何とか耐え忍ぶ基綱だったのだが、淡海乃海(近江)の一大勢力「六角家」の内部に不穏な気配が漂い始める…
その事が朽木基綱の未来を決定づける出来事になる。
2016年に素人小説投稿サイトで連載が始まった小説の書籍化作品第二弾。
小説「淡海乃海」の見所
上杉対武田の一大決戦「第四次川中島の戦い」勃発
歴史でも名高い戦いだが、web版でその詳細が描かれる事は無かった。webでは、朽木の忍び「八門」からの報告を、主人公が聞いて終わっている。
しかし、書籍版では武田陣営、上杉陣営、各々の立場からの戦いを描いており、より物語全体が深く表現されている。
六角家崩壊の序章「観音寺崩れ」
長らく朽木に伸し掛っていた六角の圧力、あれほど強大な勢力を誇った武家があっさり崩壊の時を迎える。好き勝手に動く周辺諸国に、主人公朽木基綱が取った行動は…
歴史の転換「永禄の変」
史実でも起こった足利義輝が倒されるこの事件。webでは川中島同様、主人公が報告を受けた事のみの描写になっていた。書籍版では、事件が起こった当時の描写を義輝本人の目線から描かれている。
義輝の朽木への思い、朽木の義輝への思い、その認識のズレがより大きくなっており、そのギャップが何とも切ない物語に仕上がっている。
特典 書き下ろし小説
特典短編【一】:小夜の再婚までの心情「切られた縁、繋がれた縁」
浅井新九郎から離縁され、実家に戻って来た小夜。部屋に塞ぎ込み、憂鬱な日々を過ごしていた。そんな日々の思いと、主人公との再婚が決まった事による心情の変化を描いた短編集。
特典短編【二】:小領主達の不遇ば境遇と苦悩「切所」
朽木家が、泣く泣く六角に譲った坂田郡の所領。譲られた坂田郡の領主達は、支配者になった六角家から受ける圧力に疲弊していた。そんな中で弱者達の取った行動とは?
そんな弱小領主達の物語を描いた短編集。
第二巻を読んだ感想
登場人物の真理描写が面白かった
あくまでもフィクションではあるが、小さい領主達の、苦悩や不満の情景が、今の現代社会における労働者達の心情と重なるものがあった。
戦国時代である西暦1500年代、現代から500年前にも関わらず上司といえる人物の頼りなさや将来への不安から、他の人物に鞍替えしていくなど、不安や不満・苦悩をもとに転職する現在に通じる描写に親近感を覚え面白かった。
登場人物が多く、覚えきれない
物語を読む際の難点としては、この時代の人物の名は、関わり深い人の名前の一文字を取ったり、幼少期と元服(成人式)後に名前が変わったりしている。
初めて読んだ人は、名前と登場人物像の合致に混乱すると思う。
しかし、学生時代に歴史のテストで赤点を取った私でさえ読んでいられるので、物語にはまる人であれば問題ないとは思う。
混乱する人は、特徴溢れるキャラクターで描かれてえいる漫画版で、登場人物を整理してもいいかもしれない。
書籍版「淡海乃海」第三巻のレビュー記事