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小説【淡海乃海 水面が揺れる時】第七巻レビューと感想

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朽木家と上杉家、朝廷の結びつきが強まる中、蚊帳の外に置かれる「足利義昭」が本格的に動き出す。その出来事は朽木とその周辺にどう影響するのか?

淡海乃海 水面が揺れる時~三英傑に嫌われた不運な男、朽木基綱の逆襲~七【電子書籍限定書き下ろしSS付き】 (TOブックスラノベ)

題名:淡海乃海 水面が揺れる時 第七巻

著者 : イスラーフィール

: 碧風羽

あらすじ:朽木基綱の娘「竹」の上杉家への嫁入り準備、毛利家の動向の把握、朝廷との連携と忙しい日々をおくる基綱。そんな中、足利義昭は朽木家と上杉家の結びつきを強める今回の婚儀に猛反対する。基綱は4万の軍勢を率いて「京」へ赴き、その直前に義昭に「和歌」を要求する事で婚儀の許しをもらい、渡さないとどうなるか、その軍勢で勘違いをさせる。

周辺諸国も基綱の声かけで集まる中、味方のいない足利一行は「永禄の変」で兄「義輝」が三好家に討たれた事が頭をよぎる。義昭は折れ和歌を基綱に渡し、今回の婚儀に賛成する。

これで憂いの無くなった朽木家は、上杉家との婚儀一色になる。その隙をつき散々煮え湯を呑まされた「足利義昭」が幕府の中心人物「伊勢伊勢守」を襲撃し、京を去ってしまう。京に「将軍」が居なくなった事で、今後の朽木、上杉、織田の三国同盟に陰りが生まれる。そこで基綱は朽木、上杉、織田の「三者会談」を要求するのだが…

 

 

書評

今作はいつにも増して加筆が多い巻になっている。征夷大将軍を義昭に譲った「義助」と阿波三好家側の心情や、基綱の娘「竹」の輿入れの行列が3万人だと知った時の上杉家のリアクション。和歌を要求され、4万の軍勢が京に迫っている際の幕府の慌てぶりなど、web小説で読者が知りたかった場面が、軒並み追加されている。

その分主人公側の動向についての加筆はあまり多くは無い。そのため物語はあまり進展していないが、代わりに物語の厚みと深みは増した物になっている。

見所

何と言っても最大の見所は、「朽木、上杉、織田」の三者会談だ。詳しくはネタバレになるため言及を避けるが、この場面にてある人物の野心が見え隠れする。読者としては、今後の展開に対してどうなるのか見逃せなくなる魔法に掛けられた様な、錯覚を覚えてしまう事だろう。それほどの衝撃がこの場面にはある。歴史の教科書があれば間違いなく記述され、テストにも出る事だろう。

感想

物語は大変素晴らしく、加筆部分も充分満足する物になっている。読者が求めている所をピンポイントで追加する手腕は感嘆するほかない。しかし、物語合間に挿入される挿絵が個人的には残念でならない。何と言ったらいいか…平べったい感じの絵が、重量感ある作風に合っていないのが、読んでいてものすごく違和感を感じる。これが普通のライトノベルの戦国時代転生物であれば、構わないとは思うのだが…。

今回の書き下ろしと電子版特典

『決別』『輿入れ』がタイトルの書き下ろしが収録されている。前者『決別』は、幕府の重鎮「細川兄弟」の現在の足利義昭「幕府」の今後取るべき道筋についての論争が繰り広げられている。朽木家に対し、融和的な弟と強硬派の兄の討論とそれに伴うある「決別」を描いている。後者『輿入れ』は上杉家での基綱の娘「竹」の嫁入り道具の受け入れ風景と、その豪華絢爛な品々が上杉家にどう影響したかが描かれている。

電子版特典としてタイトル『休息』が追加されている。「休息」は自室で寛いでいる基綱のもとに正室「小夜」と側室「雪乃」が訪れ、徳川の事、息子の事など談話するシーンになっている。

漫画版「淡海乃海」第2話の試し読みと、四コマ漫画が3エピソードおまけで読める。

 

蛇足

小説家になろうに投稿されている淡海乃海外伝「羽林、乱世を翔る」が書籍化するとの事。この外伝は朽木基綱(竹若丸)が幼少期に朽木家当主にならなかった場合を描いたIFストーリーになっている。本作を読まれている方はネットで検索しwebに投稿されている物語も読む事をおすすめする。