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エンフィールド事件|【考察】実話か悪戯か?怪現象の真相とは?

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「誰も触れていない家具が動き出し、少女の口から老人の声が響き渡る」――そんなホラー映画のような出来事が、1970年代のイギリスで現実に起きていた。

エンフィールド・ポルターガイスト事件は、英国史上最大の心霊事件とも呼ばれ、世界中の超常現象研究家を巻き込んだことで知られる有名な怪事件である。

1977年8月、ロンドン北部のエンフィールド地区で暮らしていたホジソン一家は、ある夜を境に不可解な現象に見舞われるようになる。

家具が勝手に動く、壁を叩く音が響く、物体が宙を飛ぶ――。やがて怪現象は一家の次女ジャネットを中心に激しさを増していった。

果たして一家を襲っていたものは、本当に霊的存在だったのか。それとも少女たちの悪戯や人間の心理が生み出した騒動だったのか――。

本記事では、英国を震撼させた「エンフィールド・ポルターガイスト事件」の概要から、目撃された数々の怪現象、調査に乗り出した研究家たち、そして現在も議論され続ける複数の考察まで徹底解説していく。

 

 

エンフィールド・ポルターガイスト事件の概要

1977年8月31日 深夜に始まった異変

イギリス・ロンドン北部のエンフィールドで暮らしていたペギー・ホジソンとその子供たちは、自室のベッドがひとりでに揺れていることに気付く。

さらに部屋の壁からは、何者かが叩くような「コンコン」という音が響き始めた。

異変を聞きつけた母親ペギー・ホジソンが部屋を確認すると、引き出し付きのチェストがひとりでに動いていたという。

恐怖を覚えた一家は警察へ通報。現場へ駆けつけた女性警察官キャロライン・ヒーズも、椅子が勝手に滑るように動く様子を目撃したと報告するも、その原因については不明なままだった。

これが、その後長きにわたり一家を悩ませることになる、恐ろしい怪現象の始まりに過ぎなかった。

激しさを増す怪現象

日が進むにつれ、現象はさらにエスカレートしていった。

家の中では突然大きな物音が鳴り響き、本や玩具が宙を飛び交うようになる。

壁や天井から叩く音が聞こえ、引き出しや椅子がひとりでに移動したという証言も相次いだ。

特に異変の中心となったのが、当時11歳だった次女ジャネット・ホジソンである。

彼女は夜になると何者かにベッドから引きずり出される感覚を訴え、突然身体が浮き上がるような現象まで目撃されるようになった。

実際に撮影された写真には、ベッドから飛び上がるジャネットの姿が写されており、現在でも心霊写真として有名である。

さらに周囲の人々を恐怖させたのが、ジャネットの声の変化だった。

少女とは思えない低くしわがれた男の声で話し始め、自分は「ビル」という老人であり、この家で死んだと語ったのである。

その声は録音にも残されており、医師や研究者たちを巻き込む大論争へと発展していった。

🔍️ 「ビル」とは何者だったのか?

男の声は、自らを「ビル」と名乗り、「私はこの家で死んだ」と語っていた。

後に調査の結果、かつてその家に住んでいた老人ビル・ウィルキンスが亡くなっていたことが判明する。

もっとも、ジャネットが事前にその情報を知っていた可能性も否定できず、真相は現在も分かっていない。

2024年放送のBBCシリーズ『Hauntings』では、後年になって「ビル」の声を聞いた人物が、かつてその家に住み1963年に1階の椅子に座った状態で亡くなったウィリアム・チャールズ・ウィルキンス(通称ビル)の声に似ていると証言したことが紹介されている。

 

心霊研究家たちの介入

騒動はやがて新聞社や超常現象研究家の知るところとなる。

英国心霊調査協会メンバーのモーリス・グロスとガイ・ライオン・プレイフェアは、ホジソン家に長期間滞在しながら調査を開始した。

2人は数千枚もの写真や録音テープを残し、家具の移動や物体の飛翔、謎の声など数々の現象を記録していった。

その中にはモーリス・グロスに対し、飛んできた玩具や積み木などが額に当たるという、直接害意を向けるものもあった。

しかし、他の調査員が調査した際には、仕掛けたビデオカメラに子供たちがスプーンを曲げたり金属棒を曲げようとする様子も映っており、その現場を懐疑派の調査員に指摘され、彼らの記録の信憑性が激しく批判される原因にもなった。

もっとも、モーリス自身も子供たちによる悪戯を認めながらも、「説明できない現象まで否定することはできない」と語っている。

彼がこう言うのは理由がある。ある撮影中に彼の額に積み木が直撃したことがあったが、積み木の投げ手が映っていなかったことがあった。さらに明らかに人がいないにもかかわらずベッドカバーが動くことがあったからだ。

🔍️ 映画『死霊館 エンフィールド事件』のモデルになった事件

2016年公開のホラー映画『死霊館2』は、このエンフィールド事件を題材として制作された。

映画では、ある悪魔による超常現象として描かれているが、現実の事件では現在も真相をめぐる論争が続いている。

数年後に終息した怪現象

怪現象は約2年にわたり続いたとされている。

しかし1979年頃、他の多くのポルターガイスト現象と同様に、あっさりと消えることになる。

一家はその後も生活を続けたが、事件の影響は長く残り続けた。

そして半世紀近くが過ぎた現在でも、エンフィールド事件は世界で最も有名なポルターガイスト事件として語り継がれている。

ホジソン一家のその後

次女:ジャネット(当時11歳)

怪奇現象の中心だった彼女は、学校で「ゴースト・ガール(幽霊女)」と呼ばれて激しいいじめに遭うこととなる。

また、メディアや大人たちから「すべてヤラセではないか」と疑われ続けたストレスもあり、10代の後半に精神科病院に一時入院することに。後に彼女は「あの出来事は本当にトラウマだった」と語る。

長女:マーガレット(当時13歳)

彼女もまた事件の影響を長く引きずったとされる。大人になってからも、自分の正体がバレないように名前を隠して生活することもあったらしい。

母親:ペギー

シングルマザーとして4人の子供を抱えながら、家の中で起きる怪奇現象と、連日押し寄せるメディアや研究者に対応し続けた結果、精神的に大きな負担を抱えることになった。とはいえ経済的に困窮していたため、気軽に引っ越すこともできず、その家に住み続けた。

そして2003年、ペギーは1階の椅子に座った状態で亡くなっているのが発見された。これは、かつて「ビル」が同じく1階の椅子で亡くなった姿と似ていた。

長男:ジョニー(当時10歳)/次男:ビリー(当時7歳)

当時幼かった2人の兄弟もまた、過酷な人生を歩むこととなった。

長男のジョニーは事件終息から間もない14歳という若さで病死した。

末っ子のビリーは、事件の恐怖からもともとあった吃音の障がいが悪化してしまった。大人になったビリーは家を出て、現在にいたるまで事件について一切の取材を拒否し、静かに一般人として暮らしている。

 

エンフィールド・ポルターガイスト事件の考察

ここでは1970年代のイギリスを震撼させた「エンフィールド・ポルターガイスト事件」……本当に霊的存在の仕業だったのだろうか?それとも人間が生み出した現象だったのだろうか。現在まで語られている主な説をもとに考察してみる。

① 本物のポルターガイスト現象説

超常現象研究家たちが記録した数々の証言から、本物のポルターガイスト現象だったとする説。

警察官や近隣住民、記者など複数の第三者による目撃証言も存在しており、すべてを悪戯だけで説明することは難しいと考える研究者も少なくない。

特に大きいのが警察官による証言だ。他にもポルターガイスト現象の報告はあるものの、公的機関による供述書があるのは非常に珍しい。事件を怪奇現象で片付けるわけにはいかない警察機関による供述書は、まさにこのポルターガイストが説明のつかない現象だったという根拠に他ならない。

また、2年以上にわたって報道機関などの調査や撮影が続いた現象に対し、人為的なトリックだけで説明できないとする意見も存在する。

🔍️ 警察官キャロライン・ヒーズ

国の公的機関による申述書だが、何も彼女が「見ただけ」で報告したものではない。彼女は悪戯の可能性も考慮し、ワイヤーによるもの、床が傾斜していないか、油で滑ったのではないかなど調べるも原因について説明できなかった。

② 少女たちの悪戯説

現在では、少女たちによる悪戯や心理的要因が関与していたとみる見方が有力視されている。

実際に家での調査中に、少女たちが物を投げる様子やスプーンを曲げポルターガイストに見せようと工作する様子が確認されている。後年、ジャネット自身「現象の一部は自分たちの悪戯だった」と語っている。

そして他のポルターガイスト現象にも共通することとして、多くの現象が思春期の少年少女の周辺で起きるというものがある。単にこの年代の子供は悪戯を好む傾向が強く、たまたまエンフィールドについては、ある種のブームに火がついただけではないかというもの。

🔍️ もう一つのエンフィールド『悪魔の棲む家』

ポルターガイスト事件のノンフィクション小説として有名な『悪魔の棲む家』も、後に金儲けをたくらむ住人と、事件で心神喪失を主張しようとしていた弁護士が結託し、些細な出来事をおどろおどろしく脚色したものだったと指摘されている。

 

③ 調査員・マスコミの誘導と過剰適応説

子供たちの些細な嘘や偶然の出来事が、超常現象を「証明」したかった調査員や、特ダネを狙うマスコミの過剰な期待によって巨大化していったとする説。

研究者の中には、調査員たちが現象を熱心に追い求めるあまり、子供たちがその期待に応えようとして行動をエスカレートさせていった可能性を指摘する者もいる。

つまり、最初はごく小さな悪戯や偶然の物音だったものが、大人が大騒ぎして注目をくれることに味を占めた子供たちと、オカルト的な成果を求める大人たちの「共同作業」によって、歴史的な大事件へと仕立て上げられていったという見方である。

実際、批判的な検証を行った手品師や心理学者たちは、「調査員たちが子供たちを監視するどころか、現象が起きやすいように誘導していた」という報告もある。

🔍️ 懐疑派の指摘:超常現象研究家アニタ・グレゴリー

事件を現地で調査した心理学者のアニタ・グレゴリーは、ジャネットたちの行動に不自然な点があると指摘していた。彼女は「調査員たちが初めから心霊現象だと信じ切っていたため、明らかな不自然さを見過ごし、結果的に少女たちの行動を社会的な『本物』にしてしまった」と強く批判している。

その証拠というわけではないが、事件後に渦中にあった長女と次女は強い重圧により精神に変調をきたしている。

当初は何でもなかった小さな悪戯が、複数の大人の過度な期待という重圧に耐えきれなくなっても不思議ではない。

④ 関係者たちによる確証バイアス説

②の悪戯説や③の調査員・マスコミの誘導説を包括する形で語られるのが、関係者たち全員が「ポルターガイスト」という結論に引き寄せられていったとする確証バイアス説である。

🔍️ ポルターガイスト調査例

日本テレビ系列『特命リサーチ200X』では、ポルターガイスト現象の多くについて、建物の構造的な問題や寒暖差による収縮、配管や振動によって発生する騒音などが原因となる可能性を指摘している。

実際に海外では、霊障だと信じられていた怪音が、水道管の交換や住宅設備の修繕によって解消された例も報告されている。

始まりは、このような建物の軋みや偶然の物音、あるいは家具が何らかの拍子で動いた程度の出来事だったのかもしれない。

しかし、決して恵まれた家庭環境とはいえなかったホジソン一家は、その些細な異変に強い不安を覚え、パニックから警察や報道機関を巻き込む騒動へと発展させていく。そこに大人たちを驚かせようとした子供たちの悪戯、特ダネを求めるマスコミ、そして超常現象の存在を証明したい研究家たちそれぞれの思惑や期待が複雑に絡み合っていった。

結果、誰もが「これはポルターガイスト現象に違いない」という先入観を持つようになり、何気ない物音や偶然の出来事までもがすべて超常現象として解釈されるようになっていった可能性がある。

事態が大きくなるにつれて、少女たちは真実を口に出せなくなっていく。周囲の大人たちもまた、少女たちの悪戯に薄々気付きながらも、自らの信念や立場から簡単には後戻りできなくなり、ますますこの事件に熱狂していったのではないか――という説である。

この説であれば、なぜ事件がこれほど巨大化したのか、なぜ少女たちが後に深い精神的トラウマを抱えることになったのか、そして半世紀近くが経った現在でも真相が定まらない理由についても、すべてに完璧な辻褄が合う。誰も真実を言えなくなった「集団の狂気」こそが、世界的な怪事件を作り上げた真相なのかもしれない。

 

エンフィールド・ポルターガイスト事件は本物だったのか

現在では、少なくとも一部の現象については少女たちによる悪戯だった可能性が高いと考えられている。

しかし一方で、警察官や記者など第三者による証言も数多く残されており、すべてを説明しきれているわけではない。

どちらにせよ、当事者たちの証言が食い違う今、事件の真相は推測の域を出ることはないだろう。

一家を襲っていたものは本当に見えない存在だったのか。それとも人間の心理が生み出した幻だったのか、あるいは両者が複雑に絡み合った結果だったのか――。

半世紀近くが過ぎた現在でも、この事件が世界中で語り継がれ続けていること自体が、エンフィールド・ポルターガイスト事件最大の謎なのかもしれない。