【物語のあらすじ・3種のエンディング・メモの解説】
Chilla’s Art(チラズアート)氏による学校の怪談の一つをモチーフとしたサバイバルホラーゲーム「花子さん」。2020年7月に発売されたホラーゲーム「幽霊列車」から5ヶ月の時を経て登場した新作ゲームとなっている。
今回は、「花子さん」の分岐するエンディングの解説や、物語のあらすじなどを詳しく紹介していく。プレイヤースキルにもよるが、2〜3時間でクリアできるので、興味がある人は遊んでみても面白い。
ダウンロード方法
本作はPCゲームの配信サイト「Steam」にて定価820円でダウンロード販売中。購入ページの詳細は下記リンクより。
本作品「花子さん」の特徴
前作とは違い、チラズアート作品において「怨霊」や「赤マント」「雪女」に近いサバイバル要素の強い作品になっている。
難易度の高かった「赤マント」とは違い、今作もセーブが可能のため「怨霊」「雪女」と同程度の難易度に調整されている。ただし、作中で自分の身を守るための重要なアイテムである「懐中電灯」はバッテリー式の消耗品であり、セーブについてもアイテムを使用して行うため、ある程度の戦略性も求められる。
かつての作品とは違い、今作は大きくグラフィックが進化し奇麗になっているので、かつてのサバイバルホラーよりもより大きな恐怖を感じる事ができるだろう。
物語のあらすじ
深夜の学校に集まった女子生徒達
主人公とクラスメイトである「ゆめ」「えり」の3人は、クラスにいるいじめっ子を何とかするため噂にある「花子さん」を呼び出すために深夜の学校を訪れる。
花子さんの噂、3階の3番目の女子トイレで呪いたい相手を思いながら「花子さん」を呼び出すと呪い◯せるという噂…いじめっ子を◯すため、噂にある通りに花子さんを呼び出そうとするのだが…
今までのチラズアート作品の登場人物達は、卵に顔の写真を貼った様な凹凸がないのが特徴だったが、本作においては登場人物達の顔に凹凸ができており、技術的にかなり進化した事が伺える。
噂の真偽
3番目の女子トイレをノックする主人公。「花子さん、遊ぼう!」と呼びかけても、何も起こる事はなかった。所詮はよくある噂である。えりとゆめは、簡単に人を呪い◯すという罪悪感から、何も起こらない事に安堵する。
しかし、主人公がトイレのドアを開けると雰囲気が一変する。和式の便所の中から、赤いスカートを履いた少女「花子さん」が這い出て来た事により、3人は恐怖のどん底に落ちる事となるのだった…。
襲いかかる恐怖
這い出て来た花子さんは泣いていた。次の瞬間、女子トイレにいた3人の女の子は、バラバラの場所へと飛ばされてしまう。主人公は、はぐれた友達を探しながら、深夜の学校からの脱出を目指して行く。
敵は花子さんだけではない。この学校には、様々な彷徨う者が存在している。彼らは、光に弱い。主人公(プレイヤー)は、手持ちの懐中電灯の「光」を駆使して、彼らを退け学校に隠された謎を解いていく。
襲いかかる怪異達
謎解きを進めて行く毎に、新たなる敵が登場してくる。始めは身体中に目玉がある巨大な化け物、巨大な顔に蜘蛛の足が生えた化け物、首無し少女、そして親玉の「花子さん」。様々な特徴溢れる怪異達が襲いかかる。そして…
今作で初めて、簡易的ではあるがムービーシーンが挿入されている。各怪異が登場する際には、特殊なムービーが少しだが流れる。
⚠ここからネタバレを含んだ内容になっています。
エンディング
今までの作品と同じく、本作においても作中で取ったプレイヤーの行動によりエンディングが分岐していく。そのどれもが学校に住まう「花子さん」の謎を示唆した物であるり、グッドエンディングにはなっていない。
通常エンディング
作中に登場する「お守り」を所持せずに、ラストボス「花子さん」を倒すと迎えるエンディング。
クリックで表示:【ネタバレあり】物語の結末
花子さんを倒す事ができた。
そう思ったら、身体から力が抜けて行った。
私は病院のベットの上で目を覚ました。
心配そうに私を見ている両親。私はあの後気を失ったらしい。
隣りのベットではゆめが寝ている。
よかった。無事だったんだ。
…えりは?
…えりは行方知れずとの事だった。
私は、えりの事を含めて、昨日の出来事を話した。
しかし、誰も信じてはもらえなかった。
悪い夢を見ていたんだと…
ゆめもショックからか、その時の記憶はないらしい…
いじめっこもあれ以来飽きたのかいじめもなくなった。
あれから一ヶ月…
えりは未だに行方不明だ。
えりの両親は日に日に窶れていって、見ているのがつらい。
そんな私にある噂が耳に入ってきた。
それは、私達があの夜に忍び込んだ物と同じ噂だった…
「夜、この学校に花子さんが出るんだって…」
救出エンディング
作中で登場する「お守り」を入手し「花子さん」を倒す。かつ、出現したポータルを抜けた先に居る「えり」を連れ戻すと迎えるエンディング。
クリックで表示:【ネタバレあり】物語の結末
学校を後にした私たち。
ゆめは震え、えりは泣きじゃくっている。
それでも私たちは生きている。
あの時、えりを助けなかったらと思うとゾッとする。
でもえりは、あの事を覚えていない。
本当にあれはえりではなかったのかもしれない。
私たちが呼んでいいものではなかった…
…花子さん…
少しいじめっ子が心配だったけど、何事もなかったらしい。
花子さんを倒したからだろうか?
飽きて来たのかいじめもなくなってきている。
人を呪うのはやめよう。
人を呪いわば穴二つってね…
それからというもの、花子さんの噂をする者は徐々に減っている。
ゆめとえりともその事を話さない。
3人の暗黙の了解となっている。
もしかしたら幻だったのかもしれない。
そんな事さえ思う。
あれからみんなはいつも通り学校へ来ている。
「転校生を紹介する。御手洗花子さんだ」
先生がそう言い、転校生を紹介する。
ゆめとえりが一斉にコチラを見る。
同時に花子さんとも目があう。
何か私に言っている様だ。
「に・が・さ・な・い」
花子さんエンディング
ポータルを抜けた先にいる「えり」の正面にある「井戸」の血を飲み干すと迎えるエンディング。
クリックで表示:【ネタバレあり】物語の結末
とても魅力的だった。
浴びた血は力に溢れていた。
えりに渡さなくて良かった。
花子さんが居ない今、この学校は私の物になった。
今までの事などどうでもよくなる。
…
この学校に来た子供達。
自分で呼んでおいて、私が現れると一瞬で恐怖の色を見せる。
その変わり様は面白い。
ああ
楽しい。
こんな楽しい事をあの子はしていたのか。
もう、友達や家族、自分の名前さえ覚えていないけど、私のやる事は理解する。
夜、学校に来た子達を◯すだけ。
そう、私こそが、この学校の花子さんなのだ。
作中で登場するメモの内容と解説
作中では様々なメモを読む事ができる。このメモの内容を読む限り、主人公に襲いかかる様々な怪異達の成り立ちの背景を示す物の様であるが…
メモ1・メモ2「金の亡者」
内容:世の中は金。金がすべてと考える人物は、その行いにより刺されてしまう。そんな人物に「花子さん」は声をかける。「ようやく見えるようになったんだね。一緒に遊ばない?」と…金が全てだと考えていた人物は、花子さんの誘いに「お金の匂い」を感じ「それは楽しそうね」と答え、乗る事にした。
解説:お金を得る事を至上としていたある人物の顛末を示したメモ。花子さんに「一緒に遊ぼう」と誘われる。会話の中で「ようやく見える」と言っている事から、ゲームで最初に登場する身体中に眼が浮かび上がっている怪異の事を指していると思われる。
メモ3・メモ4「嫁入り前の女性」
内容:昔から「可愛い」と言われて来た女性。生まれながらの可愛さをより磨き上げ、自分に相応しい相手を見つける事ができた。
しかし、何もできなさそうな女に相手を取られ、嫁入り前に捨てられてしまう。嫉妬と憎悪に燃やされる女性に「花子さん」が声をかける。「ねぇ、遊ばない?」嫁入り前に捨てられた女性は、自分と同等の美貌を備える花子さんの言葉に心を踊らせるのだった。
解説:嫁入り前に捨てられた女性の事が書かれたメモ。「醜い心が私を支配する。体もだんだん醜い心に染まって行く…」と独白している事から、順等に考えれば、主人公を襲って来る人面蜘蛛(巨大な顔に蜘蛛の足が生えた怪異)の事を指していると思われるが…
メモ5・メモ6「顔にコンプレックスのある少女」
内容:自分の顔にコンプレックスを抱える女性、鏡を見るのも大嫌いで世の中の不平等さに不満を覚えていた。そんな彼女に「花子さん」は声をかける。「顔、取る?」。コンプレックスを抱く少女は、花子さんに「そんなことできるの?」と疑問をぶつける。花子さんは「できるよ。取ったら一緒に遊ぼうよ」とコンプレックスを抱く彼女に答えるのだった。
解説:自分の顔にコンプレックスを持つ少女が花子さんに誘われるまでを書いたメモ。花子さんが「顔、取る?」と聞いている事から、作中で登場する怪異「顔のない少女」の事であると思われる。
謎の登場人物の考察
作中で明言される事はないため真相については作者のみぞ知る…という事になるのだが、その正体については、ある程度の考察も可能ではあるが…あくまで個人の見解であり公式ではないため、その点は留意してほしい。
走り去る女子生徒
作中で主人公は、制服を着た女子に出会う。この子は、主人公の姿を目にすると会話をする事なく走り去ってしまう。この女子生徒は、物語の途中で怪我をして倒れており、アイテムを使用し助けてあげると「お守り」を落として走り去っていってしまう。
走り去る女子生徒の正体
この女性生徒の正体について、作中で明らかになる事はない。
ただ、物語の途中で怪我をし倒れて動けなくなっている事から「生者」である事は確かか。
単純に考えるのであれば、ただ単に「花子さん」の噂を聞きつけ、誰かを呪いに来た女子生徒であり、主人公を見かけ「花子さんの一味」であると勘違いし逃げ去っているだけ。という事も考えられそうだが…
花子さんのルーツの一つで、休日に学校に遊びに来た少女が、変質者に追いかけられて3番目のトイレに逃げ込んだ、という話しがある。今作で登場した「走り去る少女」も初めはトイレに隠れていた事から、ゲーム作者による「花子さんのルーツ」の一つをオマージュとして組み込んだ存在かもしれない。
黒い服の女性
花子さんを呼び出そうとする「えり」と「ゆめ」の背後に一瞬現れる。その後、プールサイドのベンチに腰かけ、主人公にアドバイスを伝えてくれたりする。
黒い服の女性の正体
この女性の正体も作中であきらかになる事はない。
作中で読めるメモの中に、嫁入り前に捨てられて心が荒んだ女性の物語が存在する。黒い服の女性の見た目が成人である事から、メモに登場した嫁入り前に捨てられた人物である可能性もあるが…
上記で述べた「メモ1・メモ2」「メモ5・メモ6」と違い「メモ3・メモ4」と巨大蜘蛛との関わりが薄い事からメモ3・メモ4はこの蜘蛛の事を言っているのではなく「黒い服の女性」を指しているのでは?とも思ったが…
または、他の怪異達とは違い黒い服の女性は主人公を襲わない事から、メモ3・メモ4で登場した嫁入り前に捨てられる原因となった「私よりも何もできなさそうな女」である考察も出来そうだ。
嫁入り前に捨てられ「花子さん」に誘われた事で「力」を得た女性が、その原因となった「私より何もできなさそうな女」を学校に閉じ込める事で復讐を果たす。この何もできなさそうな女は、無理矢理この学校に閉じ込められているので、主人公を襲う事なくアドバイスを送った。という考察も出来そうだ。
終わりに
かなりの謎や裏設定とも呼べる物が点在されている深いホラーゲームだった。作者はかなりの量の資料を読み込んで、ゲームの設定として落とし込んでいる様なので、いずれは作品の裏設定を解説した資料を作っても面白そうである。
サバイバルホラーの強い作品と、物語自体を楽しむストーリー重視の作品とで交互に発売されているので、次回作は「幽霊列車」や「事故物件」などの様なゲームになると予想されるので楽しみである。
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