【あらすじ考察・エンディング解説】
学校からの帰り道。独りでの帰り道。いつもの日常、その一コマに隠れた異界と異形の怪物、今回は学校からの帰り道で襲いかかる異形の化け物から無事に家へと辿り着けるか?そんなホラーゲーム「帰り道」の物語のあらすじや解説・考察までを一挙紹介。
ダウンロード方法
2021年8月6日からPCゲームの配信サイト「Steam」にて定価520円(税込)でダウンロード販売中。購入ページの詳細は下記リンクより。
物語のあらすじ
行方不明の女の子
いつもの朝、いつもの放課後。主人公は学校から帰る時、教室である事を耳にする。それは隣町の女の子が行方不明になっているという事。その子は学校からの帰り道に行方不明になったらしいとの事だった。
話をしている学生は、その行方不明の女の子に同情していた。どうも家庭でDVを受けており、家に帰りたくなかったそうだ。その話を聞いた主人公は、帰り道にふと思う…。
私もその子の気持ち…わかるな…。
今作は、アニメーション風のオープニングムービーに加え、日本語音声が収録されている。今までの作品ではプレイヤーが文章を読み物語を理解する必要があったが、今作では音声が入る事で、より物語に入り込む事ができる。
不可解な出来事
駅のトイレで用を済ませた主人公は、個室を出ると壁に向かって泣いている少女を目にする。気になった主人公は、彼女に声を掛けると…。
「シクシク…」
「家に帰りたくない…」
「あなたと同じ…」
「あなたは帰さない…」
そう告げる…その瞬間、主人公の視界は暗転する。
帰り道「駅のホーム」
トイレで目を覚ます主人公。しかし、そこはいつもの駅ではなくなっていた。そこは異形の怪物が闊歩する世界、闇に包まれた異界へと変化していた。
その事に気がつかない主人公は、いつも通る道、家への「帰り道」を辿るのだが…。
ここから、本編であるサバイバルホラーが始まる。今回はパニックメーターと呼ばれるゲージ管理が重要になっており、暗闇に一定時間滞在するとメーターが上昇する。そのゲージがマックスになると「パニック状態」へと移行、敵から発見されやすくなり、かつアイテムを調べる動作などに制限がかかる様になってしまう。
対処法は一つ、各所に設置されている明かりの下に滞在する事でゲージを減らすしかない。
ちなみに、この「駅」のステージだが、今作と同様のクリエイターが送るホラーゲーム「幽霊列車」と同じ駅が使用されている。
帰り道「駐車場」
閉ざされていた駅のシャッターを開ける事で外へと出られた主人公は、自分の自転車を回収するため駐車場を通り駐輪場へと向かう事にした。
闊歩する怪物から隠れ、逃げながら何とか駐輪場にたどり着いた彼女だったが、なぜか自分の自転車だけが何者かに歪められ、とても乗って帰れそうな状態になかった。
帰り道「バス停」
自転車に乗れない主人公は、駐輪場から街へと出た。とても家まで歩いて帰れる距離ではないため、主人公は街で400円集めてバスに乗って帰る事にする。
建物が乱立しいつもは人で賑わう場所のはずなのに、なぜかそこには誰もおらず無人と化していた。
いや一人いた…、なぜか執拗に主人公へと襲いかかる彼女の存在が…。
ここでは神社から「大幣」と呼ばれるアイテムを使える様になる。このアイテムは一定方向に光を放っており、異形の怪物を退ける効果を持つ。このアイテムを使いながら、広いマップに落ちている100円玉を4つ回収しバスに乗り込んでこのステージはクリアとなる。
リナという名の少女
ステージ各所には「リナ」という名の少女が、主人公に母親との思い出を語りかけて来る。この子は母子家庭で生活しており、幼いながらも忙しく働く母親への気遣い溢れる優しい女の子の様だ。
帰り道「自宅周辺」から「集合団地」へ
バスから降りて、自宅まであと少し。執拗に襲いかかってきた彼女はここにまで追ってきていた。なんとか彼女から逃げ隠れし、ようやく自宅のある集合団地へとたどり着いた。
主人公は団地の地図を見ながら自分の家の場所を思い返す。そして…。
⚠ここからエンディングにおけるネタバレを含んだ内容になっています。
誰もいない家の中
ようやく帰宅する事ができた。「ただいま」と声を掛ける主人公だったが、家の中からは誰からも返答がなかった。主人公は一部屋づつ見て回るが、そこには求めていた母親はいなかった…。
「寂しい」
ついそう声を漏らしてしまった彼女だったが、その時、家の中にはドアに設置されたインターホンのチャイムが鳴り響いたのだった。
エンディング
クリックで表示:【ネタバレあり】物語の結末
家のドアを開けた瞬間、彼女は自分の部屋のベットで目を覚ます。
ふと入り口を見ると、ゆっくりとドアが開いた。
お母さんだ!
お母さんはハッとした顔をしてこちらに近づいてくる。
「え!?あんた、どうしたの?」
「その腕大丈夫?あんた、もしかして…まってて、今手当するから」
そう言い、慌てて部屋を出るお母さん。
ふと視線を落とすと、自分の腕が血だらけで赤く染まっていた。
そうか…わたし……
救急バックを持ってお母さんが部屋に戻ってきた。その背後には、よほど急いだのか、お母さんの私物が散乱していた。
手当をしながら、お母さんは涙を浮かべならがら私に言った。
「ごめんね…寂しい思いをさせて…ここまで追い詰めて…」
私は思わずお母さんを抱きしめ、一緒に泣いていた。
「リナ、大好きだよ」
「知ってる」
そう言うのが精一杯だった。
あの子はなんだったんだろう?
あの子はわたしと同じ…。
いや…あの子はわたしより重い物を背負って…。
物語の解説・考察
今作はそこまで考察するポイントはほぼなく、伏線より単純にストーリーを重視していた。
ゲーム中のステージ各所で、主人公に母親への思いを語る「リナ」という少女は主人公の幼少期の姿であり、母親への「想い」を主人公に思い出させる事で、行方不明になり自分と同じく家へ帰りたくない主人公を執拗に追っていた彼女の呪縛から抜け出し、現世へと戻る事ができた…という事なのだろう。
終わりに
母子家庭に存在する子供と親の関係に視点を当てたホラーゲームで、恐怖と家族への想いを考えさせてくれる作品であった。
パニックメーターという体力ゲージとは別のゲージ管理を求められたが、その管理がかなり面倒で、ゲージがマックスになると主人公はコケるし、アイテムを調べられなくなるし、解除条件がよくわからないしでかなり癖のあるシステムだった。
このパニックゲージの上昇速度も速く、ステージ3にあたる「街の中での探索」で、このゲージ上昇速度と調べられなくなるパニック状態との相性がわるく広いマップを隈なく調べなくてはならないにも関わらず、すぐに調べられなくなる状態に陥るのはゲームテンポの観点からストレスの溜まる要因になりやすかった。
全体的なストーリーも家族愛を描いたもので、分かり合った親子のハッピーエンディングも感動する作品で良かった。パニックゲージも新しい試みで、マンネリ化しそうなシリーズへのいいカンフル剤となっていた。
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