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短編ホラーゲーム【終焉介護】物語の謎と考察・エンディング解説

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【物語の謎と考察・エンディング解説】

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ある介護職員に襲いかかる恐怖、2人の主人公から見る物語の結末とは?ゲームクリエイター「チラズアート」による和風ホラーゲーム「終焉介護」。過去の作品と違い、ウォーキングホラーとサバイバルホラーを組み合わせた新境地が特徴的。今回はそんな「終焉介護」の物語のあらすじ解説や隠された謎を程よく考察。

 

 

ダウンロード方法

2021年4月3日からPCゲームの配信サイト「Steam」にて定価520円(税込)でダウンロード販売中。購入ページの詳細は下記リンクより。

本作品「終焉介護」の特徴

異様な雰囲気がいい感じの民家

チラズアートの過去作品「怨霊」や「雪女」でも同じ様な民家が登場しているが、そこに登場した民家の間取りはゲーム性を重視してか不自然さが目立っていた。

しかし、今作に登場した民家の間取りは良く見かける自然な作りで表現されている。さらにテクスチャもわざと粗く作られている。この自然なステージの間取りと、粗いテクスチャが交わる事で、古い民家で感じられる何処か異様な恐さが表現されている。

ムービーシーンの搭載

前作のホラーゲームである「花子さん」では少し実装されたムービーシーンが、今作ではがっつり物語の中にとけ込む形で使用されている。エンディングでも、今までの恒例である文章による後日談と合わせて、初めてムービーによるエンディングも収録されている。

 

物語のあらすじ

富田 咲千江(26)

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介護施設で働いている富田咲千江は、休憩室で寝ている「直美」を片目に訪問介護先である「古賀宗一」の下を訪れる。家には介護相手であるはず宗一はおらず、何かの異臭が漂っていた。異様な雰囲気の中、咲千江は宗一を捜すため家の中を歩き回る。そして2階を訪れた彼女は、この世ならざる異様な光景を目撃してしまい…

チラズアート作品では初のダブル主人公による2つの視点から展開される物語になっている。前日章として富田咲千江の物語を体験し、本編として「直美」の視点で物語は終局へと向かって行く。

倉本直実(22)

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直美は受付の先輩職員から出勤しなくなった富田咲千江が担当していた「古賀宗一」の担当を押し付けられてしまう。先輩の同行もなく、1人で初めての訪問介護のため不安を覚える直美だったが、先輩の説得に押し切られ、この日から宗一の下へ向かう事になった。

宗一宅へ赴いた直美は、暗い部屋の中で車いすに乗る宗一へと担当変更の挨拶を済ませる。しかし、その言葉も空しく宗一は一言のしゃべる事なくどこか虚空を見つめるのだった…。

本作は前半は「事故物件」の様な雰囲気で楽しむホラー、後半は「怨霊」の様な逃げ隠れを楽しむサバイバルホラーへの切り替わりが特徴的。オートセーブになっており、任意のセーブは出来ないため後半のサバイバルホラーパートはゲームオーバーになると、オートセーブ部分まで巻き戻され少し面倒。

異様な雰囲気と怪奇現象

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宗一の不可解な態度もそうだが、宗一宅は異様な雰囲気に包まれていた。突如電源がつくテレビ、家の窓にぶつかって絶命するカラス、数々の怪奇現象に襲われる直美だったが、初めての訪問介護という事もあり、何とか宗一の介護スケジュールをこなそうとする。

何とか宗一を風呂に入れ寝かしつける所までスケジュールをこなした直美だったが、宗一を布団に寝かしつけた瞬間…。

家の中の雰囲気はチラズアート作品でピカイチの出来前。物理的な恐怖はないが、古民家独特のどんよりとした雰囲気の不気味さは上手く作り込まれている。

咲千江

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未だに出勤してこない前任者の富田咲千江。直美は宗一宅で体験した不可解な現象の謎を解くべく、自宅に引きこもっている咲千江の下へと訪れるも、何かに怯える彼女からは要領を得る事は出来なかった。

情報を得る事を諦め、咲千江の部屋から出る直美だったが、彼女の背後から何かから逃げる様に叫び声を上げた咲千江が、マンションから飛び降り亡くなってしまうのだった…。

今作は移動ステージが多い。介護施設、街の中、宗一の家、咲千江のマンションと4つのステージを行き交う事になる。ただし、移動できる範囲自体はそこまで広くはないが…。

 

⚠ここからネタバレを含んだ内容になっています。

 

 

天狗と呪い

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直美は何かに急かされる様に再び宗一の家を訪れる。彼女は家の中で唯一、開かずの間だった部屋に入るため、家に散乱する道具を使う。開かずの部屋の中には「幸運は床の下に貯まる」と記された謎のメモが…。彼女はメモに従い、家の中に隠された地下室への入り口を見つけ、足を踏み入れて行く。

家の地下には一般家庭ではあり得ない広大な地下道と、天狗の面を被らされ捕われている宗一を発見する。すると同時に、この家に住む「何者か」が直美に襲いかかる。

彼女は、地下で見つけた「助かるためのメモ」に従い、襲撃者から逃げ隠れつつ謎を解いて行く。

ここからがサバイバルホラーパートになる。今までは宗一の家で起きる不可解な現象に恐怖を感じるが、このパートでは何者かに襲われつつ謎を解かなくてはならない恐怖と焦燥感が混じった感情を味わう事になる。

クリックで表示:【ネタバレあり】エンディング

直美はメモの謎を解き、封じられた短剣を使い捕われた宗一を解放する事に成功する。

「ありがとう」一言も喋らなかった宗一がお礼の言葉を口にする。

彼は「自分が呪いでしゃべれなかった事、直美を襲った襲撃者は自分の亡き妻だった事、その亡き妻を利用し元凶である天狗は自分を完成させようとしている事」を直美に伝える。

直美は不可解な出来事を解決すべく、宗一に言われた通り家に封印されている骨壺を家の外に出そうとするも、自分を完成させようとする天狗が彼女へと襲いかかるのだった…。

 

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何とか天狗から逃げ家の外に出た直美は、一心不乱に近くの神社に駆け込んで行く。そこでは神主がお経を唱えており、入って来た直美が抱える骨壺に眼をやると「もう少し遅かったら大変な事になっていたよ」と告げ、骨壺の供養と夏美のお祓いをしてくれた。

 

直美は今でも宗一の介護を行っている。後日、直美は宗一と共に亡き妻のお墓参りに訪れた。ちゃんとした挨拶ができた。直美はそんな事を思いながら、どこか嬉しい気持ちを覚えていた。

 

そんな彼女を、車椅子に乗り天狗の翼を生やした宗一が見つめていたのだった……。

終焉介護「富田咲千江」の手記

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劇中では、直実の前任者であり1人目の主人公「咲千江」の「宗一」への介護手記が登場する。5日間に渡って書かれたその内容には、彼女が宗一宅で感じた違和感が刻々と綴られている。

ゲーム中で読める手記の概要になってます。詳細はゲームにて

1日目

宗一さんの家、平凡な1日だったが、臭いが…?明日は、この臭いを取り除かなくては

全ての始まりの日、ゲーム中でも「臭い」を強調する場面が多く、ゲーム背景を考察する重要なキーワードになっている。

直実編で初めて、咲千江編では行けない1階と2階の間の空間に行ける様になる事から、咲千江の感じた臭いはここから発生した、もしくは物語終盤で訪れる地下空洞もしくは天狗自身の臭いの可能性も…。

2日目

宗一さんが認知症だったとは…。昨日はあんなに元気だったのに。良くなるといいのだが…。

ここですでに宗一が呪いにかかり喋れなくなったと思われる。咲千江編・直実編ともに宗一は車椅子に座っているだけの存在で、物語終盤まで一言たりとも言葉を発する事はない。

3日目

今日居るはずの宗一さんの家族が土壇場で来れないって…。ゴミ出しをして芳香剤を置いたが効果なし。まだ家の中は腐った物の臭いがする…。

この時にはすでに「宗一の家族」はこの世を去っていると思われる。物語終盤のメモから、宗一を含む5人家族(宗一の妻は他界)だった様だが…。

4日目

今日訪問したら宗一さんが家の外の地面に横たわっていた。何があったのだろう?

壁や天井から引っ掻く音や叩く音が聞こえて来る。音の元を探っても何にも見当たらない。それにしても臭いが…。臭いが何処から来ているかも皆目見当つかない。

家の全てが私を狂わせる。

介護施設にある宗一の介護カルテには、彼は外に出る事を嫌がる性格が記されている。しかし咲千江の手記には、外に出ている宗一の姿が書かれている。

5日目

2階の部屋。なんでおばあちゃんが…?何してる?何でここに?

なんかすごい寒い…。風邪かも。明日は仕事に行かない方がいいかも。

5日目の内容が本作プレイ開始時に富田咲千江としてプレイヤーが体験する出来事なのだろう。咲千江編ラスト、彼女がある部屋を覗いてその光景に驚き尻餅を付くが、この時に目撃した物はゲーム中は暗くてよく見えない。彼女の手記からは「おばあちゃん」が「何か」していた所だったのだろうと推測できるが…。

 

烏天狗の謎と物語の考察

烏天狗の謎

平安時代には、絵画で描かれた怨霊の姿が「烏天狗」そっくりに描かれていたりする。この事から烏天狗は怨霊を具現化したモチーフとしても扱われていた事がわかる。

また天狗は不老不死とされており、ゲーム中に宗一が「奴は妻を利用して完全な姿になろうとしている」と言及している場面と合わせて、烏天狗による「完全なる存在(不老不死)の儀式」に「古賀宗一家族」が巻き込まれたのかもしれない。

物語の考察

・烏天狗と宗一

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ゲームで読む事ができる以下のメモの内容から、主人公のゲーム中で取った行動が烏天狗による誘導ではないか?という考察もできる。

・宗一の介護カルテによる彼の性格

・物語終盤、捕われた宗一の近くに置いてある不可解なメモ

ゲーム中に、宗一の介護カルテに「宗一は外に出る事を嫌う」と記されている。

しかしゲーム中の宗一は、外に出ている事が多い。この事から、咲千江が訪問した時にはすでに宗一の身体に烏天狗が憑依しており、儀式が完全でなく満足に動けない烏天狗に代わり、亡くなった妻を利用し儀式を執り行っていた最中であった…。

・主人公も烏天狗に利用されていた

物語終盤で地下に捕われていた宗一の近くに置いてある「助かるために行動すべき4つの行動」が記されたメモが落ちている。この内容が、まるで主人公のこれからの行動を指示する様な物になっている。

実はこのメモに書かれている事は助かるためのメモではなく、烏天狗による儀式の手伝いをさせられていたのではないだろうか。

・亡き妻「宗一さん、会いたかっただけなのに、ごめんね」の意味

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物語終盤で主人公が家の謎を解き、隠された短剣を宗一に刺す事で捕われた彼を解放する事になる。そして主人公に襲いかかってきた亡き妻の亡霊は「宗一さん、会いたかっただけなのに、ごめんね」と懺悔し、再度天へと帰る事になる。

この宗一を解放するために短剣を取るための謎解きパートになった瞬間に、亡くなった妻の亡霊はまるで主人公を邪魔するかの様に襲いかかり始める。そして主人公が短剣を入手すると、亡き妻は上記の懺悔の言葉を漏らす。

この事から、亡くなった妻は烏天狗からの「宗一にもう一度会える」という誘惑に乗ってしまい、烏天狗の儀式を手伝う駒となってしまったのではないだろうか。儀式が完了してしまうと宗一は烏天狗に乗っ取られ宗一本人ではなくなるため、短剣を取ろうとする主人公の邪魔をしに襲いかかったと推測できる。

そして、主人公が短剣を取った事で儀式の完了を悟ってしまう。「宗一さん…会いたかっただけなのに」自分のほんの少しの宗一と再び会いたい淡い思い。「ごめんね」結果として宗一は宗一でなくなる事への懺悔を口にしたのではないだろうか。

 

終わりに

順調に進化を遂げて行くチラズアートホラーであった。今までは、恐怖体験を主とした作品と化け物から追われるサバイバルホラーを主とした作品とで交互に発売されてきたが、本作ではその両方を混ぜ合わせた作風が印象的だった。

とわいえ、まだまだ改良の余地はありそうで、ラストのゲームオーバー要素のあるサバイバルホラーパートでゲームオーバーになると、その直前から再開するのではなく少し戻った所からリスタートになってしまう。

任意の場面でセーブする機能がないため、もう一度同じ謎解きをしなくてはならず、全滅要素のあるサバイバルパートにおいて何度も同じ行程をさせる事が、プレイヤーに不要なストレスを与えてしまう点が残念であった。この点は後にアップデートで対処されそうではあるが…。

総評として、ゲームの主な舞台である民家の雰囲気は最高。2人の主人公による物語も新鮮。ラストの化け物が襲って来る場面も、いつ現れるかわからなくて最恐。ただし、オートセーブによる全滅時の巻き戻してからの再度の謎解きはストレス。といった所。

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