ホラーゲームに登場するオリジナリティー溢れた見た目や挙動でプレイヤーを楽しませてくれる敵クリーチャーの存在。様々なクリーチャーが登場してきたホラーゲーム業界でも、今回は「倒せない」「無敵」というワードに絞って7作品をピックアップしてみた。
クロックタワー
登場クリーチャー:シザーマン
1995年にスーパーファミコンから発売されたホラーゲーム。初代は主人公のジェニファーを操作し、大鋏を両手でもつ「シザーマン」から逃げつつ屋敷を脱出する事を目指していく。その道中で襲い掛かる「シザーマン」の対処方法は「逃げる」「隠れる」のみ。イベントを介さないと倒せない敵であり、プレイヤー操作時に遭遇する際には無敵である。
一般的なゲームである直接主人公を操作する方法ではなく、画面上に出現する矢印を押す事で主人公をそのポイントへ誘導する方法で操作する。この直接操作せず、指定ポイントを選択して誘導するワンテンポ遅れる操作が、よりプレイヤーに恐怖を与える作品となった。
Monstrum
登場クリーチャー:Brute・Hunter・Fiend
1人貨物船に取り残された主人公が、船内を徘徊する謎の怪物に襲われつつも、落ちている道具を使いながら貨物船から脱出する事を目指すホラーゲーム。
PCゲーム販売サイト「Steam」で販売されたが、後にPS4やSwitchに移植されている。船内での部屋に配置や落ちているアイテム、出現するモンスターは完全ランダムとなっており、なおかつセーブが不可能の仕様。当然、出現するモンスターは無敵であり倒す事はできない。プレイヤーが取れる行動は「逃げる」「隠れる」しか存在しない。
そんなモンスターが徘徊する船内で、ランダム配置のアイテムを回収しゲームクリアを目指すわけだが、各々違う特徴能力を持つモンスター、その特徴による各々違った回避方法は、プレイヤーに焦燥感と恐怖を味合わせてくれる。
DEMENTO
登場クリーチャー:追跡者
開発当初はクロックタワーの続編として製作されたが、新規ユーザーの取り込みを図るため別作品として発売された。それゆえ、作中ではクロックタワーにおける「逃げる」という特徴が色濃く反映されている。
物語の章ごとに別々の忠ボスが登場するが、章をクリアするまでボスは絶対に倒す事ができない仕様。さらにホラー映画のアングルも意識されており、画面外から急にボスが迫ってくるなど、プレイヤーの恐怖を煽る演出が特徴的。
SIREN
登場クリーチャー:屍人
2003年シリーズ作品第1作がPS2で発売。その作中にでてくる「屍人」が倒せない敵として登場する。厳密に言うと、一時行動不能には追い込める。しかし、時間経過で復活する事や、そもそも主人公達が戦闘向きでない事から、基本的に「逃げる」「隠れる」の行動を取らなければいけない。
ゲームの仕様上の能力として、この敵が見ている光景を見る「視界ジャック」という能力が登場する。この能力を使う事で、現在の敵の位置を把握し、隠れながら進んでいくのだが、使用中は当然主人公視点の視界は塞がれてしまう。敵が見ている光景を確認しつつ、先へと進もうとした時、自身自体に敵が迫っていたなんて事も…。
バイオハザード:RE2
登場クリーチャー:タイラント
2019年に発売された1998版「バイオハザード2」のリメイク作品。本作に登場する「タイラント」という敵クリーチャーは、ある物語上のイベントまで倒す事はできない。ゲーム中で手に入る銃の弾丸を惜しみなく使ったとしても、一時的に動きを止める程度の効果しかない。そのため、基本的には逃げ回る事になるのだが、銃の発砲音や物音を感知すると、その場所に近づいてくるため、タイラント以外の敵への対処方法などにも影響を及ぼしてくる。
その物音をたててしまった事への焦り、何処からタイラントが現れるかわからない見えない恐怖、その2つの感情がプレイヤーに襲い掛かってくる。
Shadow Corridor-影の回廊-
登場クリーチャー:徘徊者
フリーゲームから始まり、追加要素を加えた製品版が様々プラットフォームで発売された。興味本位で足を踏み入れた路地は、異界への入り口だった。様々な怪異が徘徊する世界からの脱出を目指していく和風ホラーゲーム。
鈴を鳴らす徘徊者、音を出しながら走り回る徘徊者、無音で忍び寄る徘徊者、様々な特徴を持つ徘徊者達が登場し主人公に襲い掛かるが、すべての敵に共通する事は「倒せない」事。
そもそも武器と呼ばれるアイテムを入手する事がないため、ゲーム上「逃げる」「隠れる」わざと音を出し「おびき寄せる」しかできない。
薄暗い和風の屋敷が舞台となり、その不気味な雰囲気もさる事ながら、登場してくる無敵のクリーチャーの容姿も「ザ・日本」の恐さがよく表現されており、怖いの一言。
エイリアンアイソレーション
登場クリーチャー:エイリアン
映画「エイリアン」と「エイリアン2」の間に起こった物語で、エイリアンシリーズの主人公エレン・リプリーの一人娘であるアマンダ・リプリーが主人公のステルスホラーゲーム。
この作品に登場するクリーチャーはタイトル通り「エイリアン」。映画本編でも猛威を振るった宇宙生命体が登場する。映画では倒せない敵ではない存在であるが、本作においては「倒せない敵」として登場する。
エイリアンの身体能力上、見つかってから逃げる事は困難を極め、そもそも「見つからない」ぐらいしか対処法が存在しない(あるアイテムを使用する事で、退かす事は可能だが…)。
そのため、プレイヤーはまるで映画の中に登場するエイリアンを相手にしたサバイバルな恐怖を体感する事ができる。
終わりに
その見た目だけでなく、特徴豊かな特性から人間が持つ潜在的な恐怖の一つ「立ち向かえない事への恐怖」を感じさせてくれるクリーチャー達であった。
今回はゲームタイトルが被るため記載していないが、ゲームキューブで発売された初代バイオハザードのリメイク作品に登場した「リサ・トレヴァー」も倒せない敵としての恐怖を感じたキャラクターだった。攻撃できる武器を所持しておりながらも「立ち向かえない」、この無力感からくる恐怖心をすごく感じた事を今でも覚えている。