ギリシャ神話においてゼウスがパンドラに渡した「あらゆる災いのもと」を封じ込めた一つの箱、彼女は好奇心からこの箱を開けてしまい地上には不幸が広がってしまった。
この名を冠した日本の怖い都市伝説「禁后-パンドラ-」という物語。ある地方の少年達は自身の好奇心に負け、大人達の注意を無視し封じられた家に置かれた封じられた家具の引き出しを開けてしまい…。
そんな物語のネットで流行った怖い都市伝説「禁后-パンドラ-」を一挙ご紹介。
禁后(パンドラ)とは
禁后(パンドラ)とは2009年、あるホラー系サイトに掲載された怪談話のタイトルとなる。
いわゆる「行ってはいけない場所に行ってしまい恐怖の体験をしてしまう」系の怪談話。一般人による体験談になっているため、禁忌の場所に何があったのか?なぜ呪われてしまったのか?など気になる部分は結局不明なまま話が終わっている。
投稿者の不気味な体験談や謎につつまれた部分が、読者の考察心を上手く刺激する魅力的な物語としてネットで一時話題に。
ちなみに禁后を「パンドラ」と読むのは、あくまでも「開けてはならない存在」という意味で投稿者たちがそう呼称しているのであって、実際に禁后の読み方が「パンドラ」というわけではない点に注意。
禁后(パンドラ)のあらすじ
禁后の家、入ってしまった当日の出来事
私の故郷に伝わっていた「禁后」というものにまつわる話です。
どう読むのかは最後までわかりませんでしたが、私たちの間では「パンドラ」と呼ばれていました。
私が生まれ育った町は静かでのどかな田舎町でした。
目立った遊び場などもない寂れた町だったのですが、一つだけとても目を引くものがありました。
町の外れ、たんぼが延々と続く道にぽつんと建っている一軒の空き家です。
投稿者が子供時代の話。同世代間では、親達がこの家に関して過剰な反応を示す事や、窓はあるものの出入り口となる玄関が存在しない作りをしている事から子供達の好奇心を刺激していた。
それでも大人たちからの注意が心の底にあったのか、投稿者は近くに行ったりはしたものの実際に入る事はしなかった。
私が中学にあがってから何ヵ月か経った頃、ある男子がパンドラの話に興味を持ち、ぜひ見てみたいと言いだしました。
名前はAとします。
このAは親がこの町の出身で他県へ嫁いでいったが、離婚を機に戻ってきたらしい。A自身は町に来たのは初めてなため、このパンドラの話を知らなかったのだ。
初めはこの奇妙な家へまつわる話題で盛り上がるも…。
「そこに何があるかってのは誰も知らないの?」
「知らない。入ったことないし聞いたら怒られるし。知ってんのは親達だけなんじゃないか?」
「だったらさ、何を隠してるのかオレたちで突き止めてやろうぜ!」
Aは意気揚揚と言いました。
Aのこの言葉を契機に、親に怒られる恐怖よりも好奇心が勝ってしまい友達数人で町に鎮座する奇妙な家へと侵入する事に。
当然出入り口がないため窓を割って入るも、家の様子はというと。
左側に台所、正面の廊下に出て左には浴室と突き当たりにトイレ、右には二階への階段と、本来玄関であろうスペース。昼間ということもあり明るかったですが、玄関が無いせいか廊下のあたりは薄暗く見えました。
古ぼけた外観に反して中は予想より綺麗…というより何もありません。
家具など物は一切なく、人が住んでいたような跡は何もない。
居間も台所もかなり広めではあったもののごく普通。
出入り口がない事以外、至って普通の家といった印象。Aたちは2階も探索しようと移動を開始したのだったが。
左にのびた廊下には途中で浴室があり突き当たりがトイレなのですが、その間くらいの位置に鏡台が置かれ、真前につっぱり棒のようなものが立てられていました。
そして、その棒に髪がかけられていたのです。
どう表現していいかわからないのですが、カツラのように髪型として形を成したものというか、ロングヘアの女性の後ろ髪がそのままそこにあるという感じです。(伝わりにくかったらごめんなさい)
一目見て明らかに普通ではない何かを発見。
パニックになる一同だったが、少しして一緒に入った友達Dの妹がいない事が判明する。D妹を探すもすぐに発見、とりあえず一安心と思いきや。
その部屋の中央には、下にあるのと全く同じものがあったのです。鏡台とその真前に立てられた棒、そしてそれにかかった長い後ろ髪。
異様な恐怖に包まれ、全員茫然と立ち尽くしたまま動けませんでした。
「ねえちゃん、これなぁに?」
不意にD妹が言い、次の瞬間とんでもない行動をとりました。
彼女は鏡台に近付き、三つある引き出しの内、一番上の引き出しを開けたのです。
「これなぁに?」
D妹がその引き出しから取り出して私達に見せたもの…それは筆のようなもので「禁后」と書かれた半紙でした。
幼いがゆえの行動か、はたまた何者かに操られた行動か、D妹の行動に焦りを覚えたDは妹が出した半紙をしまおうと引き出しを開けるも間違えて三つある一番下の引き出しを開けてしまい。
ガラッと引き出しを開けたとたん、D子は中を見つめたまま動かなくなりました。
黙ってじっと中を見つめたまま、微動だにしません。
「ど、どうした!?何だよ!?」
ここでようやく私達は動けるようになり、二人に駆け寄ろうとした瞬間、ガンッ!!と大きな音をたてD子が引き出しを閉めました。
そして肩より長いくらいの自分の髪を口元に運び、むしゃむしゃとしゃぶりだしたのです。
この異常なDの様子にAたちは急いでDを引っ張り家を出て、大人の助けを借りる事に。
泣きながらなんとか事情を説明しようとしたところで母は私と男三人を突然ビンタで殴り、怒鳴りつけました。
「あんた達、あそこへ行ったね!?あの空き家へ行ったんだね!?」
普段見たこともない形相に私達は必死に首を縦に振るしかなく、うまく言葉を発せませんでした。
「あんた達は奥で待ってなさい。すぐみんなのご両親達に連絡するから。」
この後、親たちが集まった所で当事者たちへの事情聴取が始まる。
「あんた達、鏡台の引き出しを開けて中にあるものを見たか?」
「二階の鏡台の三段目の引き出しだ。どうなんだ?」
他の親達も問い詰めてきました。
「一段目と二段目は僕らも見ました…三段目は…D子だけです…」
言い終わった途端、D子のお母さんがものすごい力で私達の体を掴み「何で止めなかったの!?あんた達友達なんでしょう!?何で止めなかったのよ!?」と叫びだしたのです。
どうも大人たちの反応から引き出しの三段目が重要な模様。そして半紙に書いてあった「禁后」は人の名前らしい。ただし、正しい読む方を知ってしないと決して読めない名前とのこと。
そして子供たちは2階に連れて行かれたDの事が気になりBの父へ聞いてみるも。
「あの子の事は忘れろ。もう二度と元には戻れないし、お前達とも二度と会えない。それに…」
B君のお父さんは少し悲しげな表情で続けました。
「お前達はあの子のお母さんからこの先一生恨まれ続ける。今回の件で誰かの責任を問う気はない。だが、さっきのお母さんの様子でわかるだろ?お前達はもうあの子に関わっちゃいけないんだ」
こうして好奇心により、決して行ってはいけないと言われた場所にいった子供たちの短くも長い1日がようやく終わりを迎えたのだった。
その後
それからしばらくは普通に生活していました。
翌日から私の親もA達の親も一切この件に関する話はせず、D子がどうなったかもわかりません。
学校には一身上の都合となっていたようですが、一ヵ月程してどこかへ引っ越してしまったそうです。
投稿者いわく、この出来事以降は大人たちにより窓など出入りできそうな場所は厳重に閉ざされたらしいとの事。
A達とはDの事もあり自然と疎遠になっていき、進学の進路も違いさらには卒業後には町を出て行ってしまい十年以上経過し今に至っている。
ここまで下手な長文に付き合ってくださったのに申し訳ないのですが、結局何もわからずじまいです。
謎は謎のまま、Dもその後の容態は不明。
ただし投稿者が大学生の時、Dの母から自分の母宛に手紙が届いたらしい。内容は絶対に教えてくれなかったが、母親は投稿者に対し一言。
「母親ってのは最後まで子供の為に隠し持ってる選択があるのよ。もし、ああなってしまったのがあんただったとしたら、私もそれを選んでたと思うわ。それが間違った答えだとしてもね」
伝聞
禁后(パンドラ)の話が投稿されて一年後、投稿者により「ある家系が行っていた風習」についての詳細が書き込まれる。
それによると、あの当時に侵入した家はこの風習の結果生まれたものだと判明。
悪習の目的は、「母親が娘を生み、その娘の身体や精神や生命を呪物として用いる事で、『母親の精神を楽園に』向かわせる」事。
娘は「この風習のためにその身を捧げる」「そのためだけに生まれた」と教育し、剥がした爪や抜いた歯、切り落とした指や髪の毛などの身体の一部を呪物として用い捧げるなどして、この儀式を行うとの事。
そして、鏡台の上部の引き出し内に入っていた半紙に書かれていたのは、娘の「仮の名前」、下部の引き出しの中には「本当の名前」が入っている。
この本当の名前を下手に見ると、発狂する呪いがかけられてしまうらしい。
この家系はある事件により族滅し悪習は途絶える結果に。町の人たちが家をそのままにしていたのは、この凄惨な事件の供養のためだったらしい。
そしてあの当時にA達が見たのは上部に入っていた「仮の名前(禁后)」で、Dが見てしまったのが下部の「本当の名前(◯◯)」だった事で呪いにかかり発狂してしまったということがわかった。
禁后-パンドラ-を読んだ人の感想
禁后を久しぶりに読んだ何回も読んでるとうわあ…っていう感想しか出てこないな。
禁后(パンドラ)という怖い話というのがございましてね、まあそれネットで見つけたのですが、お母様が子供を、というところまでは理解できますけれども、でしたら、お母様は誰が?まぁ、物語ですからなんとも言えませんけどね。
この話が実話であるなら今後も被害者が出る可能性が高い話だと思いました。
子供は興味本位でわからないものを知りたがる。
この話を知るだけで鳥肌が立ち、ちょっとした怪談レベルではないことを感じます。
引用元:https://kyofu.takeshobo.co.jp/news/column/2ch-horror/167/
禁后-パンドラ-に近い実際にあった風習
名付けの呪術
— 遠野市立博物館 (@tonomuseum) 2023年8月4日
生れた子が虚弱であったり、親に不幸が続いたりした場合に神仏や神職・僧侶、修験者などに仮の親、取親 となってもらう。
取親は取子に実名のほかに取子名を授け、その神秘的な呪力により、その名を呼ばれると丈夫に育つと考えられた。
取子守内符
呪術展〜9/24 pic.twitter.com/5rcw929UCV
名付けの呪
— 遠野市立博物館 (@tonomuseum) 2022年1月7日
昔から日本では言葉には呪力があると考えられてきた。言霊ともいわれ、言葉に宿る霊力が、発せられたことばの内容どおりの状態を実現する力があると信じられてきた。
子どもの名付けに際して誰かにあやかった名をつけることも、言葉の持つ呪力を認めた例の一つといえる。
呪術展資料 呪符 pic.twitter.com/awNHzNBtxA
似た風習して、産まれた直後は「幼名」を名づけ、成人後に実名を付ける事がありました。これは幼い頃は病気等で命を落としやすく、無事子供が成人できる様祈りをこめる意味がありました。
都市伝説をもとにした映像作品
口にしてすらいけない恐怖『禁后-パンドラ-』【都市伝説映像化】
YouTubeに投稿された自主映画作品。3分ほどの短編となっており、あくまで都市伝説を参考に独自に物語をまとめたものとなっている。
カイダン都市伝説 洒落怖 第四話 パンドラ-禁后-
こちらはプロが制作した24分程のオムニバス形式の短編ドラマで、他にもトイレの花子さんなどを取り扱ったドラマ集で四つめの題材としてパンドラが映像化。
あらすじ:母親の田舎に引っ越してきた梨沙と志乃の姉妹。姉の梨沙は定職にもつかず家でゴロゴロ。
一方、妹で高校生の梨沙は優等生でしっかり者。
母親の遼子は、妹の志乃の方を溺愛していた。ある朝、志乃は、高校の同級生である高瀬絵里と一緒に学校へ向かって歩いていると、一軒の不気味な空き家の前を通りかかり、その家が「パンドラ」と言われていることを絵里から聞く。
その日の晩、志乃は遼子に「パンドラ」の家のことを尋ねると、遼子は顔色を変え、「絶対にあの家に近づかないで。話題に出すのもやめて」と強い口調で言うのだった。
以上、怖い都市伝説「禁后-パンドラ-」徹底紹介でした。