【物語の謎考察】
零細映像制作会社に勤める主人公。上司の命令でとある奇妙な家に肝試し映像を撮りに行く事となった。簡単な肝試し映像の撮影、当初はそう思っていたのだが、その家にはこの世ならざる者が支配する領域であり…。
そんなチラズアートホラーゲーム「自撮」。今回は自撮のあらすじやエンディング解説、物語に残された謎を一挙考察。
ゲームの紹介
今作は今までとは少し違った擬似ドキュメンタリーホラーが特徴。
映像制作会社に勤める主人公は、上司に面白い映像を撮ってこいと命令される。そんな主人公は、上司の勧めもありとある廃屋を訪れた。
その廃屋では、以前に不可解な出来事に襲われており…主人公は家で見つけるビデオテープを再生する事で過去に起こった出来事を追体験していく形でゲームを進めていく。
※このゲームには暴力シーンや一部グロテスクな表現が含まれています。苦手な方はご注意ください。
この表記もあるため、これ系も苦手な人も注意してください。
ゲームのダウンロード方法
『自撮』本日発売
— Chilla's Art|チラズアート (@ChillasArt) 2023年12月16日
Jisatsu is out now on Steam
Play Now: https://t.co/zMC78hFhpU pic.twitter.com/Ht0MePIv4g
2023年12月15日からPCゲームの配信サイト「Steam」にて定価700円(税込)でダウンロード販売中。購入ページの詳細は下記リンクより。
短いながらギュって詰まった感じのホラーゲームでした。
おもしろかった~♪
映像がかなり綺麗になっててちょっと重たいかも。最後きちんとオチ?みたいなものもあって満足です♪
猟奇的な描写が散見されるので苦手な人は苦手かも 正直ボリュームは少な目で、もう終わり? と感じた。
ただ、短いながらも様々なホラー要素が詰まっていて、濃厚な恐怖体験になると思う ヘッドフォンでプレイするのがオススメです。
パラソーシャル・誘拐事件がボリュームが多かったぶん自撮のボリュームが少なく感じました。
製作期間のスパン(誘拐事件→自撮)が他と比べ少なかった為、仕方ないところですね。
ですが、怖さはちゃんとありましたので次もチラズアートさんの新作を期待してます。
物語のあらすじ
映像制作会社の企画は奇妙な家の肝試し
「おい、新しい企画できたか?」
零細映像制作会社に勤める主人公。新しい映像企画について上司に詰められていた。
「弱小零細企業は数だしてなんぼなんだよ。企画考えたか?」
「なにボーっとしてんだよ!若いんだから足を使え!足を!」
「最近、使われていない家なんかの肝試し映像が流行っているらしいな」
「◯◯県◯◯市の家、ここなんか奇妙な家らしい」
まさか、自分が行くんですか?
上司に押され、しぶしぶながらカメラ片手に噂となっている使われていない奇妙な家に向かったのだった。
奇妙な家
手入れのされていない庭、所々壊れている屋内、肝試し映像を撮影しにきた主人公は、屋内をカメラ片手に探索していった。
ビデオテープ
屋内を探索する主人公は、ある場所で一本のビデオテープを発見する。さっそく部屋に置かれていたビデオデッキで再生してみると、どうもこの家で起こった過去の出来事を撮影したものの様で…そこに映し出されていたのは、十字架を持ち祈りを捧げる老夫婦の姿と、何者かの声に導かれている子供の様子を記録したものだった。
そして、ビデオテープを見つけては再生していく主人公の後ろに、何者かの影が迫るようになり…。
⚠ここからエンディング・ゲーム内容におけるネタバレを含んだ内容になっています。
エンディング
本作のエンディングは分岐しない模様です。それでは、どうぞ!
自分の成れの果てを撮影「自撮」
屋内を探索しつつビデオテープを見つけていく主人公。この家で起こった過去の出来事の様だが、テープを見つけていくたびに不可解な出来事や何者かの影を見かける様になる。
そしてたどり着いた地下空洞では、とうとう何者かの襲撃を受ける事に。からくも家から逃げ出せた主人公は、自分の車に乗って来た道をひたすら戻るのだったが…。
クリックで表示:【ネタバレあり】物語の結末
この家で起こる不可解な出来事と過去の映像、地下で遭遇した何者から逃げるように廃屋を後にした主人公は、ひたすらに車を走らせ逃げていた。
しかし途中の道は倒木により塞がれていた。主人公は車を停めて自分の足で逃げ出そうとしたのだったが…後ろから着いてきた何者かに捕まり廃屋へと連れ戻されてしまったのだった。
グチャグチャグチャ…。
主人公を引きずり家まで戻ってきた男は、風呂場で何かの作業をしていた。風呂場の床は赤く染まっている。
「それを持ってこい」
赤いダウンの男は何者かの声に導かれ、それを声のもとへと送り届けたのだった。
そんなビデオを見ていた映像制作会社の社員達。
部下「これって誰が送ってきた映像なんですかね」
上司「さぁな、会社に送られてきたんだよ」
部下「もしかして、最近休んでいるあいつじゃないですか」
部下「あいつって家の映像撮りにいってから会社来てませんよね…」
上司「やめろよな、フェイクだよフェイク」
部下「では、ちょっとトイレに…」
上司「次の企画考えるから早く戻って来いよ」
戻らない部下、上司は彼を探しにトイレへと向かったのだったが…。
床に倒れている部下。
その姿を目にし驚愕する上司だったが、彼の後ろには赤いダウンジャケットを着たビデオに映ったあの男が…。
自撮の謎「声の正体」などを一挙考察
ここからは作中で明かされなかった謎を考察していきます。
逆さ十字と声の正体
物語終盤、何者かの声に導かれたビデオの少年は家中の十字架を逆さにしていく。この聖なる十字架を逆さまにする「逆さ十字」には二通りの意味があり、一つはペテロの謙虚さを示すもの、そしてもう一つは聖なるものの逆、邪悪を意味している。
聖なるものの象徴である「十字架」を逆さまにしたものであるため、邪悪の象徴、反キリスト教的なイメージのものとして扱われることがある。
実はカトリック教会でも使われるシンボルであり、イエス・キリストの弟子であり、初代ローマ教皇と伝えられるペテロが◯刑される折、自身がキリストと同じ状態で磔にされるに値しないとして逆さまに十字架にかかることを希望した、というエピソードに由来する。
引用元:ピクシブ百科事典
そしてこの家の子供に聞こえている何者かの声。この声が要求するものはシにまつわるものが多い、さらに悪魔の象徴でもある逆さ十字を要求する事からも、声の正体は「邪悪なるもの、悪魔」である事がうかがえる。
実績解除の謎
昨今のゲームでは、到達プレイ進行に応じて実績が解除されていく。本来であれば進行サブタイトル的な意味を持つ実績解除だが、本作ではなぜか「6」「12」「36」などの数字と合わせて「10111111」などの2進数の数字が解除タイトルとなっている。
まったく意味不明な実績解除のタイトルだが、この数字を2進数を文字に変換できるサイトで確認すると…「サタン」の文字が浮かび上がる。
この事からも、子供に語りかけていた者の正体は「邪悪なるもの、悪魔(サタン)」である事は確定か。
赤いダウンジャケットを着た男の正体
物語終盤に登場する主人公に襲いかかる男。彼は主人公に襲いかかった後、風呂場で謎の声に導かれているところからも、ビデオテープに登場した子供の大人になった姿であると推察できる。
地下空洞に置かれた十字架の墓標から見る男の本質
物語終盤に訪れる事となる地下空洞。そこには地面に突き刺さる複数の十字架を目にする。このいでたちはまさに墓標である。この複数の十字架は、主人公同様に奇妙な家の噂を聞いて肝試しに訪れた者達の成れの果てである可能性がある。
最初のビデオテープにて、声が聞こえる子供は屋内で見つけた鳥の亡骸を庭に埋めようとしている。この行動から、声に導かれる彼は本来慈愛の精神を持つ優しい心の持ち主である事がわかる。
とはいえ押し入れの中に鳥の亡骸が散見している様子も窺え、彼は自身で鳥を手にかけつつも、彼の本質である優しい心もまた残っているという非常に心のバランスが不安定な状態である事を推察できる。
それでも彼は数年経過した後でも悪魔に従い供物を用意し続けているが、本来の優しい一面まではいまだに侵食されきれておらず、供物にしてしまった者達の墓を用意してあげているのでは?という説。
ゲーム中では主人公に襲いかかる恐ろしい彼だが、その本質には優しい一面があり、あくまで作中の悲劇は人が悪いのではなく等しく皆が悪魔の被害者である、というメッセージが隠されているのかもしれない。
黒塗りの謎
作中にてある登場人物や顔の部分にモザイク(黒塗り)が掛かっている場合があった。子供の両親の遺影、マリア像の顔などだ。
一切の説明がない演出だが、子供に語りかけていた声が悪魔であった場合、一定の説明ができるかもしれない。
それは聖なる者に接触させない(見せない)いうもの。
子供にとって親とは神聖な存在でもある。悪魔は子供を操る上で、純粋な子供の心に慈愛や愛情といった聖に繋がるものを見せない(接触させない)様にしていた…という説だ。終盤では主人公も悪魔に侵食されてか、母性の象徴マリア像の顔が見えなくなっている。
ただ、最後のビデオテープを見た後ではマリア像の顔が見えているため、その点は説明がつかないが。
自撮のタイトルの意味
本作のタイトル「自撮」は、タイトル画面でもある通り「◯さつ」と読む。これは自ら命を奪う「◯さつ」と同音異義語のため、何かしらの伏線があると思った人も多いだろう。
しかし作中でこの二つの言葉をリンクさせるポイントはない。
では単純に自分で撮影したドキュメンタリー映像を意味しているのだろうか…。
果ては…。
上司から言われるがまま命令されるがまま、奇妙な家を訪れた主人公。悪魔に言われるがまま命令されるがまま、奇妙な家で供物を捧げる赤いダウンジャケットの男。他者に言われるがまま行動を起こす自分がないという似た境遇の2人を撮影した物語という意味なのかもしれない。
また作中でラジカセから流れてくる意味不明な音声。普通に聞いても意味が通らない言葉となっているが、この音声を逆再生すると「jesus(ジーサス)」と聞こえる。これはキリスト教のイエスを意味する単語であり、本作ゲームタイトル「自撮(◯さつ)」と掛かっている。
物語で起こった出来事の整理
初見では物語の全体の流れにおいて、意味不明な部分が多い。ここでは作中で判明している出来事から、物語の背景を考察していきたい。
1:ビデオの中の主人公は視線の高さから当時は子供であり、作中の描写やセリフから住人は祖父母と両親、子供の5人である事。
2:ビデオの子供は何者かの声に導かれシにまつわる物を持って来させられている。要求内容から見ても、声の者は聖なるものでなく邪悪に連なる者である。
3:最初のビデオで2人の亡骸を前に十字架を持つ祖父母が祈りを捧げている。
4:地下空洞でイエスと思われる肖像画とマリアと思われる像が置かれている。
これらから、キリスト教にまつわる悪魔の悪意に侵食されていく家族を背景としている物語である事が考察される。この物語をベースに、ここを訪れた映像制作会社の社員の身に起こった恐怖の出来事が本作全体のプロット、といった感じか。
そして、この考察を元にした前日章はこんな感じでしょうか?
自撮「前日譚」(考察)
悪魔の声が聞こえる子供、不可解な出来事に悩まされる家族。とうとうこの日、子供の両親の命が尽きてしまった。
子供の祖父母は、自分達や悪魔に取り憑かれた子供に災いが及ばないよう十字架を手に持ち神に祈る。家中には魔除けとして十字架を至るところに飾ったりした。
どうか助けて欲しいと。
しかしそれでも悪魔の前には意味をなさなかった。祖母がこたつで息を引き取り、祖父は風呂場で息を引き取る。たった1人家に残された子供は、悪魔の声に従い彼らを供物として悪魔に捧げ、かの象徴として家中の十字架を逆さにしてまわった。
それから時間が経ち、この家の噂は人々に伝わり奇妙な家として絶好の肝試しスポットとして知られる様になった。
訪れる者は帰る事はなかった。子供は悪魔の声に従いながら、この家を訪れた者達を供物として捧げていたのだがら。
そんな噂を聞きつけた映像制作会社は、一つの企画として社員の1人を向かわせる事となり…。
以上、自撮に残された謎の考察でした。新たな考察があった際には、順次更新していきます。
終わりに
前作から約1ヶ月半というスピードで発売された今作だが、内容は前作の社会問題とからんだホラーではなく、純粋なホラー作品となった。
聞いた話によれば、チラズアートは2チームでゲームを制作しているらしく、今作は前作チームとは別のチームのため、社会問題に絡んでいない作風になっている模様。
という事は、次作は何かしらの社会問題を扱ったホラーが発表されるのだろう。
そんな社会問題を扱った前作のホラーゲーム
チラズアートの最初の作品