人気の小説や漫画が避けて通れない道「実写化」。映画にドラマと数々の作品が実写化されてきた。原作での実績があるからこそ、ある程度の収益を見込めるため実写化されるが、その原作を忠実に愛するファンがいるからこそ実写化もまた難しい。
そんな数ある実写化作品の中で、今回は原作を愛するファンが激怒した…ではなく、作品を生み出した原作者自身がブチ切れた実写化映画を紹介していく。
原作者ブチギレ実写化映画の激怒エピソード
タイトル / エピソード表
映画タイトル | 激怒エピソード |
---|---|
模倣犯 | 終始無言で映画を途中退席、監督との対談でも無言。原作との大幅な改変に激怒。 |
テルマエ・ロマエ | 原作者に対し原作使用料等の説明が不十分で、契約結果を知らせるのみの体制に不満、契約・管理面で激怒。 |
orange-オレンジ- | 公開に合わせて原作者が「観ない」とX(旧Twitter)に投稿、心情をめぐり大炎上。 |
苦役列車 | メディアで「どうしようもなくつまらない映画」「時間のムダ」と批判。 |
海猿 | フジテレビとの契約問題や事務所への無断取材により絶縁、続編制作も許可せず。 |
原作者無言退席「模倣犯」
模倣犯は、直木賞受賞『理由』や、山本周五郎賞受賞『火車』でおなじみの宮部みゆき先生が原作の長編サスペンス小説。2002年に中居正広が主演を演じ、天才を自称する犯罪者の暴走を描いた映画として実写化。
かなりの改変を加えられており、宮部先生は…。
💡 原作者の激怒エピソード
実写化された映画を見た宮部先生は終始無言。
しかも、映画を最後まで観る事すらなく、途中で退席。
さらには、映画監督との対談インタビューでも終始無言。
原作者だけでなく、作品を愛するファンも激怒している。
1400ページにもわたる原作を、約2時間という映画の尺におさめる都合上仕方がないが、原作と比較してかなりの改変があり、キーキャラや登場人物の性格までかなり変わってしまっている。改変に合わせるように物語の構成や結末も変更されることになってしまったのが原因だろう。
一方、2016年にテレビドラマ化もされており、映画に比べ尺の制約が少ないことからも原作に忠実で丁寧に作られており、ファンからおおむね好評な実写化となっている。
興行収入58億、原作使用料100万円「テルマエ・ロマエ」
もとは原作者ヤマザキマリ先生による漫画作品。古代ローマ時代の風呂と、現代日本の風呂をテーマにしたコメディ漫画で、2012年俳優の阿部寛を主演とした実写化映画として公開、大ヒットを記録した。
映画は大変出来が良く好評で、原作者も映画そのものに怒ったわけではない。怒ったのは映画に対してではなく、原作を使用するために結ばれた契約関連のことだったのだ。
💡 原作者の激怒エピソード
原作者があるテレビ番組に出演した際にこう暴露した。
「原作使用料は約100万円だった」
興行収入約58億円というテルマエ・ロマエの大ヒットにより周囲の人間から「かなり儲けたのでしょう?」と言われ続け、それに困った先生は誤解を解くためにも使用料を暴露したそうだ。
しかも映画の番宣で各所に出向いていたマリ先生にはギャラが支払われず、実質タダ働きだった。
番組放送直後からインターネット上では騒動に発展。
それを受け、原作者の契約交渉や契約管理などの代理人を務めている弁護士がコメントを発表。
それによると決して100万円という金額に対し不満を抱いているのではなく、第三者同士が勝手に作品の価値を決め、原作者に十分な説明をせず結果のみを知らされる原作に対するリスペクトのなさに不信感を感じているとのことだった。
この映画は見ない事にしました「orange-オレンジ-」
2012年、別冊マーガレット/月刊アクションで連載された高野苺先生が送る、クラスメイトが自ら命を絶ち後悔しつづけて生きた10年後の自分から届いた手紙による未来を変えるべく行動するSFミステリー。
SFとミステリーを混ぜ合わせた珍しい設定と、思春期による心のゆらめきを詳細に描いた作風が人気を博し、9カ国に翻訳され出版された。
そして2015年、とうとう実写化されるも…。
💡 原作者の激怒エピソード
何が起こったか詳細は不明だが、映画の公開に合わせて原作者は以下の様にX(旧Twitter)に投稿した。
orangeの実写映画ですが、私は観ないことにしました…色々辛いことがあり、観る勇気が出ないので、観たら感想言うと言ったけど申し訳ないです。
(当該ポストは現在削除済み)
そして、演者やスタッフに失礼だとこのポストは大炎上、それを受けて高野先生はアカウントの削除に追い込まれてしまうという結末を迎えた。
補足しておくと、X(旧Twitter)の投稿には出演者を労う内容のものもあり、それでも投稿せずにいられない心情があったのだろう。
メディアで批判を展開「苦役列車」
劣等感とやり場のない怒り、日雇い仕事を続ける19歳青年の将来への希望のなく厄介な自意識を抱える日々はまるで苦役の従事、彼の明日はーー。
西村賢太先生の小説が原作、森山未來が主演の2012年に公開された実写化作品。
この作品の原作者だが、かなりの不満があったのか数々のメディアでその心情を吐露している。
💡 原作者の激怒エピソード
「どうしようもなくつまらない映画」「時間のムダ」「陳腐な青春ストーリー」と、他メディアでことごとく不満を漏らした。
物語の改変も、原作を超えてくれるならばいいが、客観的に見て到底その域には達していないとこき下ろした。
このように原作者による批評があるも、映画監督自身も原作者に不満を持っており、対談で試写会用の資料を渡した時は原作者の反応は好評だったのに、批評をメディアで展開するのは不可解で腹立だしい、とまで言っている。
この原作者による批評の嵐だが、ネットではいわゆる話題性を高める「ネガティブ・キャンペーン」ではないかと指摘されている。
フジテレビとは絶縁だ「海猿」
1999年〜2001年まで連載の作者佐藤秀峰 / 原案小森陽一が送る、海難救助を中心とした海上保安官の活躍を描いた日本漫画で、実写ドラマ化や映画化がされ大ヒット、演者の演技やストーリーも感動的であり漫画の実写映画化の成功例とも言っていい。
しかし原作者にも不満があった。
💡 原作者の激怒エピソード
2012年原作者である佐藤秀峰はX(旧Twitter)であることを発表した。
フジテレビが原作者との契約なく関連書籍が発売されていること。
アポもなく自身の事務所に突撃取材されたこと。
数々のフジテレビ側の行為により、今後新規契約はせず、続編の制作も許可しない。
この発表に対して世間は炎上、フジテレビも騒動を沈静化させるため定例会見で謝罪する事となった。
しかし、これに対して原作者は「ファンには申し訳ないと思うが、なぁなぁにはできない」としフジテレビとの関係は断絶された。
3年後の2015年に原作者とフジテレビは和解する。しかし原作者は、2017年10月までの契約を最後に今後海猿がテレビやネットで放送される事はないと明言した。
そして2024年2月、とある原作者が自ら命を絶つ事件が起こる。海猿の原作者「佐藤秀峰」先生は、当時の心境を振り返りつつ出版社などメディア側と原作者との関係についてnoteに綴った。
💭 まとめ・考察
実写映画化は原作ファンや制作側にとって期待と不安が入り混じるため難しいプロジェクトになる。今回紹介した5作品に共通するのは、原作者の意図や作品世界へのリスペクトが不十分なまま進められたことによる「怒りの発生」が主要因。
ただし、怒りの原因は単に作品の出来だけでなく、契約や情報共有などの制作・運営面も大きく影響している。原作を大切にする気持ちを尊重し、ファンと制作側の橋渡しを意識することが、実写化成功の鍵と言えるのだろう。
以上、原作者が激怒した実写化映画5選でした。そしてこういうエピソードは何も実写映画にのみ起こることではなく、アニメ化やテレビドラマ化でも同様の問題は発生しています。