題名
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ザ・ボーイ 人形少年の館 |
公開
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2016年 |
監督
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ウィリアム・ブレント・ベル |
時間
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81分 |
出演
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ローレン・コーハン、ルパート・エヴァンス |
新たな仕事は「子守り」の仕事で相手はなんと只の人形!それは恐怖の始まり…。
グレタ・エヴァンスは、ヒールシャー家に子守りとして雇われた。
グレタは老夫妻の邸宅を訪れ彼らの子供に対面しが、子守りの相手は少年ではなく「人形少年ブラームス」だった。
夫妻から命じられた仕事をする上で10個のルールの絶対遵守。
グレタは旅行に向かう夫妻を見送り人形相手に細かいルールを守るも、その必要性を感じず時間を潰す日々を送る。
そして遂にルールを破ってしまい、グレタの周りで不穏な事が起こり始める…。
⚠物語の結末や伏線に関わる【ネタバレ】を含みます。未視聴の方は注意して下さい。
ザ・ボーイ人形少年の館の特徴は
人形を世話する様に言う老夫婦の異常性
妻の人形を息子の様に世話する人としての狂気、夫はこの状況が「異常だと」認識しつつも付き合っていくしか無い苦労。それを引いた目で見てる主人公グレタ。
文字だけで見ればコメディでしかない状況だが、俳優達の演技力で真面目な雰囲気を醸し出し、ちゃんとしたホラー映画へと昇華させている。
特に老妻の目に狂気が宿る様は、女優のすごみを感じる。
10個のルールに散りばめられた伏線の嵐
物語も良く練られており、老夫妻に厳命される「10個のルール」。
この内容そのものが、物語の秘密を握る大きな伏線となっている。良い意味でも、悪い意味でも視聴者の期待を裏切ってくれる最大の謎として機能。
そんな10のルールとは。
1. 毎朝7時に起こして着替えさせる。 |
2. 毎日3時間、勉強を見てあげる。 |
3. 音楽を聞かせてあげる(大音量が好み)。 |
4. 食事をさせる。 |
5. 食事の残りは絶対に捨ててはいけない。 |
6. 暖炉は使ってはいけない。 |
7. ねずみの駆除を行う。 |
8. 寝る時はお祈りをする。 |
9. 1人にしないで。 |
10. おやすみのキス。 |
本作最大の見所は10のルールの謎が明かされる瞬間
物語終盤のある出来事により、「少年人形:ブラームス」を老夫妻が世話している理由、主人公グレタが雇われた理由、なぜ「10個のルール」を厳命されるのか?その謎が一気に氷解していく。
その内容は、なんとも驚愕するものであり、本作最大の見所となっている。
物語の結末と伏線解答
伏線の解答【1】人形少年ブラームスの正体
本作のラストで今まで起こっていた不可解な出来事は、全て「壁の中の秘密部屋に潜む、本当は生きて大人になっていたブラームス」の仕業だと判明する。
グレタに厳命された「10個のルール」は、人形を通して「生きているブラームス」に対し行われていた事だった。
それが判明した後で「10のルール」を見直すと伏線が繋がって来る爽快感に似た感覚を覚える。
伏線の解答【2】10のルールの伏線解答
劇中でグレタが老夫婦から言われた人形に対する10のルール。全てのルールは人形に対して行われていたが、物語終盤で真の意味がわかる。
絶対遵守の10のルール
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ルールの真の意味
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1. 毎朝7時に起こして着替えさせる。 | 壁の中で生活するブラームスに朝を知らせるため。 |
2. 毎日3時間、勉強を見てあげる。 | 壁の中にいるブラームスに勉強を教えてあげるため。 |
3. 音楽を聞かせてあげる(大音量が好み)。 | 壁越しにも聞こえる様に大音量で音楽を聞かせてあげるため。 |
4. 食事をさせる。 | 食事を作れないブラームスに用意させるため。 |
5. 食事の残りは絶対に捨ててはいけない。 | 人形は食べないが、壁中のブラームスが後に壁の中から取りに来るため。 |
6. 暖炉は使ってはいけない。 | 壁の中にいるブラームスのトラウマを呼び起こさせないため。 |
7. ねずみの駆除を行う。 | ねずみが壁の中を動き回らない様にするため。 |
8. 寝る時はお祈りをする。 | 時間感覚のないブラームスに就寝時間を教えてあげるため。 |
9. 1人にしないで。 | 壁の中で1人孤独に生活を送るブラームスに寂しさを感じさせないため。 |
10. おやすみのキス。 | 間接的に壁の中にいるブラームスに人と人の触れ合いの大切さを教えるため。 |
この様に、全てのルールは「壁の中で生活するブラームス」へ向けたものとなっている。
伏線の解答【3】パッケージに隠されたミスリード
さらに伏線は商品パッケージにも隠されている。
パッケージのブラームス人形をよく見ると、「右目が赤く」「左目が黒い」。
この意味は「赤目はブラームス人形の目」「黒目は人間のブラームスの目」を表している。
物語中盤までであれば、ブラームス少年の魂が人形に宿っていると思う人が多いだろう。人形ホラー系映画の鉄板ネタでもあるし。
しかし物語の結末まで観た後であれば、このパッケージはプラームス少年の魂が人形に宿っている様を表すものではなく、そのまま人形の仮面を被っている生きたブラームスを表している事が理解できる物語最大のネタバレが含まれてるミスリードを誘うデザインをしている事が判明する!
観賞評価
物語の構成は面白いが、人形ホラー映画としてはいまいち
物語の構成は面白いが、人形ホラー作品としてはいまいち。
ちりばめられた伏線と回収、人形の不気味な雰囲気とホラーとして完成される土台があるのだが…いかんせん、オチが「成長した人間のブラームス」って…という感想を持ってしまう。
人形ホラーとして観るとガッカリ
物語の伏線と回収、そしてジワジワ感じる恐怖。
単純なホラー映画であればB級映画としては比較的面白い部類に入る。老夫妻が異常な行動をしているのか?そして伝えられるルールの謎、ミステリーホラーとしても面白い作品ではある。
だが実際に映画を見てもらえばわかるが、人形ホラー作品としては正直微妙ではある。人形のホラーといえば、「アナベル」「チャイルド・プレイ」など数多の名作があり、正直この映画を観る際には、似た様な物(オカルトホラー)だと期待して観るわけだ。
それが物語の結末では人形に宿った悪霊の類ではなく、単純に火事がトラウマとなって引きこもった人間ブラームス君だった…というのが何とも。
プロットはしっかりしているだけに、オチがよければもっと評価は高くなる。
鑑賞後評価は★(2.4)。
悪い意味で期待を裏切る作品でもあった。