【あらすじ考察・エンディング解説】
時間外配達。深夜の静まり返った住宅マンション。残業を押して、配達物を届ける主人公に襲いかかる恐怖の体験を描いた短編ホラーゲーム「例外配達」。インディーズホラーゲームクリエイターとして名高い「チラズアート」が送り届ける和風ホラーゲーム。
今回は、チラズアート作品では定番となっているマルチエンディングの到達条件や物語のあらすじを解説。
ダウンロード方法
2021年6月5日からPCゲームの配信サイト「Steam」にて定価310円(税込)でダウンロード販売中。購入ページの詳細は下記リンクより。
物語のあらすじ
配達員(31歳)の例外配達


最後の配達エリアに到着した主人公は、5つの荷物を届ける事で、今日の仕事を終える事ができる。深夜遅くの配達、仕事を終わらせる焦燥感に駆られつつ、1件1件丁寧な時間外の「例外配達」を行って行くが、配達先の住人達は何処か異常な行動を見せてくる。
夜のアパートの雰囲気がよく表現されており、チラズアート作品初のエレベーターが搭載されたステージとなっている。前作「終焉介護」と違い、今回のステージはこのアパートのみ。
206号室宛ての荷物
スーツ姿の男性「おせぇなぁ!あいつと同じかよ!2度顔を見せるな!」と吐き捨て、配達員である主人公に持っていたペットボトルを投げつけてくるのだった。
502号室宛ての荷物
パジャマ姿の女性。電気の着いてない室内に立つ彼女は、404号室の住人から貰ったキャットフードを主人公に渡し、一方的に扉を閉めてしまう。
401号室宛ての荷物
フードを被った男性。「怖い…僕も同じに見えます?怖くないですか?…このアパート…僕も、この中の一人になってます?」と意味不明な言葉を発する男性は、主人公に、あなたは信用できないから105号室に住む「祭司」と話さないと荷物は受け取らないとごねてしまう。
305号室宛ての荷物
メガネをかけた女性。「その荷物わかるでしょ?」「ベットフレームよ」「組み立てるまでが仕事でしょ?」と言ってくる。主人公は指定された場所にベットフレームを組み立てるも、組み立て終わった時には先ほどまでいた部屋の女性は何処にもいなかった。
202号室宛ての荷物
母子。扉が開いた瞬間、小さな子供が飛び出し走り去ってしまう。母親と思われる女性は、主人公が急に来た事が原因だと激怒し、息子を捜してこいと命令してくる。主人公はアパート内を捜し回り、扉が開いた4階の一室内に居た子供を連れていくのだが…。
異様な雰囲気に呑まれた空間
子供を連れ2階の母親の所に向かう途中。周囲は異様な雰囲気に包まれてしまう。保護した子供の姿もいなくなっており、周囲が赤くぼやけ、階層毎にハシゴが掛けられたあみだくじの様な様相のアパートがそびえ立っていた。
駐車場には、配達用のトラックが置いてあり、中には先ほど届けたはずの荷物が横たわっていたのだった…。
このステージでは、今まで使えていたエレベーターが使用不能に。廊下に掛かっているハシゴを登り、指定の荷物を届けていく。
異様な空間での例外配達


廊下に掛けられたハシゴを登り、各階へと荷物の再配達を行う主人公だったが、部屋には住人の姿はなく、日記の様なメモが置かれていた。
この日記の内容は、康平が綴った物となっており、引っ越しして来てからのつらい環境を伺い知れる物になっている。
戻って来た世界
異様な雰囲気のアパートでの配達を終えた主人公は、動き出したエレベーターに乗り、元の世界へと戻って来る事ができた。手には、先ほど保護した子供も抱えていた。そのまま202号室へと送り届けるも、部屋には母親の姿はなかった。
一応、全ての荷物の配達が終わった主人公は、トラックへと戻るのだが、そこには届ける予定にない荷物が一つだけ置いてあったのだった。
最後の荷物
無いはずの荷物、それは404号室宛ての物だった。主人公は不審に思いながらも、最後の荷物を届けに404号室を訪れるのだが、部屋には誰も居なかった。台所の机の上に生活保護の書類がある事から、404号室の住人は、今まで読んで来たメモの人物「康平」だと思われるのだが…。
⚠ここからエンディングにおけるネタバレを含んだ内容になっています。
エンディング
エンド2「大家(53歳)」
特定の行動をせず、一般的なプレイスタイルで到達するであろう、エンド1を迎えるための3つの条件を達成しなかった場合のエンディング。
クリックで表示:【ネタバレあり】物語の結末
康平を捜し、部屋の中を見て回るが、ある和室の真ん中に置いてある、冷気を放つ冷蔵庫を見かけた瞬間、あたりは赤く染まった凄惨な部屋へと切り替わってしまう。そこには、今まで荷物を届けた際に会話を躱した住人達が倒れており、とても生きているとは思えない姿をさらしていた。
そして、配達員の意識は…。
404号室で起こった出来事、その全てを監視カメラで見ていた大家は、その異常な出来事を確かめるため404号室へと向かう事にした。
404号室には誰もいない。
中を捜索する大家さんだったが、身体に衝撃が走り倒れてしまう。
意識のなくなる寸前、大家が目にしたものは、視界の端からゆっくりと現れた2本の足。
上半身は見えなかったが、そこからは白い冷気の様な物を放っていたのだった…。
エンド1「真エンディング」
3つの条件を満たし、康平の母親からの手紙を読む事で迎えるエンディング。
【1】206号室の住人から投げられたペットボトルを拾い、公園にいる犬に与え、母からの手紙を読む。
【2】502号室の住人から貰ったキャットフードを、アパートごみ捨て場にいる猫に与え、母からの手紙を読む。
【3】202号室の子供が隠れていた部屋、403号室のベランダに置かれている花瓶を地面に落とし、子供を202号室へと連れて行く。そして404号室へと届ける最後の荷物を取る前に、地面に落とした花瓶から「404号室のメールBOXの鍵」を入手する。
その鍵を使い、404号室のメールBOXに入っている母からの手紙を読む。
クリックで表示:【ネタバレあり】物語の結末
404号室はもぬけの殻だった。
中を捜索する主人公だったが、ある和室に不自然に置かれた冷蔵庫を目にする。
冷気を放つ冷蔵庫、その中からは凍り付いた人間が入っていたのだった…。
その場を後にする配達員。
アパートで起こった事を知った彼は、あそこをそのままにしてはおけなかった。
決心した彼は、大家の通帳を持って(アップデートで削除)警察へと向かい、警官に事の経緯を説明した。彼の話を聞き、警官はアパートへ向かった。
警察は早々に自◯と判断した。
それは、配達の仕事の範疇を越えているものだった。
大家は警官に事情聴取される事となった。(アップデートで削除)
今も康平の魂はアパートに住んでいるのだろうか。なかよしアパートは姿、名前を変え、人が来るのを今か今かと待っている。
物語の考察
作中で読める康平の手記や、エンド1・エンド2での出来事から配達員が例外配達に来る前に起こった出来事を推察する事ができる。以下「なかよしアパートでの出来事」は、本編での手記をまとめ、一つの物語として推察した物になってます。
なかよしアパートでの出来事
前のアパートでの人間関係の構築に失敗した康平は新たな引っ越し先である「なかよしアパート」での生活を始めた。積極的にアパートの住人と交流を持とうとした康平だったが、被生活保護者への世間の風当たりと偏見から中々上手くいかなかった。さらに、前のアパートで色々と問題があった康平は、大家に相場より高い家賃を請求され搾取されてしまっていた。
康平は自身の性格から、その事に深く悩み、ついには憎しみを募らせてしまう。そしてアパートの住人を◯し、自らの命を断ってしまったのだった。その事を察したアパートの大家は、今後の住人の受け入れや世間体を考え、康平を冷蔵庫に入れ監視カメラで、この事が発覚する事を防ごうとする。
本作の主人公「配達員(31)」は、不可思議なアパートでの出来事を警察に話した事で、捕われていた康平は解放されるのだった…。
物語の考察ポイント
異世界の様なアパートでのエレベーターで遭遇した康平の手には包丁が握られていた事、エンド2での404号室内に住人の無惨な姿が散見される事から、康平は冷たい態度のアパートの住人を皆◯しにしていると思われる。
エンド1エピローグで、康平を発見した警察が自◯と判断した事、404号室のある地点の床が黒く染みていた事(自◯の特徴)から、康平は自ら命を断っている事は確定か。
エンド2冒頭、配達員の視界にノイズが走り、その引きとして大家宅のテレビが映る事から、大家は404号室を監視していたのであろう。もしかしたら4階に置いてあった大量のゴミ袋は…アパートのごみ捨て場には出せない「何か」だったのかもしれない…。
エンド2冒頭、大家宅で見かける通帳には康平だけが、他の住人よりも倍近い家賃を支払っている事がわかり、被生活保護者である康平を不当に搾取していた事を垣間見る事ができる。
母らの手紙



ゲーム中に入手するアイテムを使用する事で、物語上の重要人物「塩田康平」に関する手紙を読む事ができる。一人暮らしする息子を心配する母親の愛情溢れる内容になっており、物語に隠れる「悲しさ」をより補強する内容になっている。
エンド1のエンディングを迎えるための条件でもある。
終わりに
本作は正直、怖さはあまりない。生活保護者への世間の風当たりの強さ、その生活保護者を利用しようとする者、生活保護を受けねばならない者と家族、生活保護という社会のセーフティネットを中心に様々な立場の人間達が一同に介し、その物語にホラー要素を混ぜ込んだ、何とも後味を感じる作品であった。
とはいえ、ホラーゲームとして恐怖を感じる事をメインに考えている人には物足りず、物語メインでホラーはトッピングとして考えている人には好まれる賛否の分かれそうなゲームであった。
多分、制作者もその事は十分に理解しているためか、今までのホラーゲームの値段より低いのはその点を考えてなのかもしれない。
個人的には、康平の人の良さと、その母親の優しさがゲーム中の手紙で読み取れるため、エンディング後には悲しい気持ちになり憂鬱な気分になったので、きつかった。
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