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小説【淡海乃海 外伝集〜老雄〜】あらすじ・見所・感想

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戦国を生きた老将。歴戦の英雄達は主人公である朽木基綱に何を感じたのか。

淡海乃海 水面が揺れる時 外伝集~老雄~【電子書籍限定書き下ろしSS付き】

題名:淡海乃海 水面が揺れる時 外伝集〜老雄〜

著者 : イスラーフィール  : 碧風羽

小説家になろう連載中で、その根強い人気から書籍・漫画・舞台・ドラマCDと数々の媒体で制作された小説「淡海乃海 水面が揺れる時」。

物語は、現代を生きていた1人の男が戦国時代の弱小領主「朽木家」へと転生し、史実を知っているというアドバンテージを生かしながら、群雄割拠の乱世を生き抜いて行くというもの。

本作は、淡海乃海本編で語られる事がなかった老雄、戦国時代を自身の知恵と勇気、非情な決断を取る事で生き抜いた男達から見た主人公「朽木基綱」という男に何を感じていたのか、その物語を集めた外伝作品になっている。

 

 

あらすじ

老雄〜六角定頼〜

本編小説1巻〜2巻に登場した六角左京丈夫の親が登場する。主人公が4歳時の時の物語で、群雄割拠を生き抜き六角家を巨大な勢力にまで発展させた男が主人公「朽木基綱」をどう見ていたのかを書いた短編物語。

あらすじ:六角定頼は、1人の男が無性に気になっていた。その男は六角から見たら弱小中の弱小、気にかける意味すらない存在「朽木家先代当主:朽木稙綱」である。

最後の最後まで将軍家に義を通し、六角家に反発していた男、同年代の彼だからこそある種のライバル心を抱いていたのかも知れない。そんな事を考えていた定頼だったが、ふとその男の孫であり現在の朽木家当主「朽木基綱」の動向が気になり始め…。

老雄〜朝倉宗滴〜

名家「朝倉家」の全盛期を作り上げ、戦国時代を70年以上も生き抜いた男「朝倉宗滴」。この短編は、本編第1巻の朽木基綱(幼名:竹若丸)が京を三好家に追われ逃げて来た将軍家に対して授けた打倒三好の軍略(作戦)にまつわる物語となっている。

あらすじ:朝倉家の元に将軍家から使者が訪れる。朝倉家を牛耳っている宗滴は、朝倉家当主にかわり使者との応対をまかされる。その応対で将軍家が提示した打倒三好の軍略、宗滴はその軍略の中に隠された違和感、策を授けた人物の脅威を機敏に感じ取る…。

老雄〜朽木稙綱〜

主人公の朽木基綱の祖父であり、唯一といってもいい理解者だった「朽木稙綱」。この短編は、自身の寿命も残り僅かであると悟った稙綱の、今までの人生を振り返る物語。本編小説第3巻に収録された外伝がほぼそのまま収録されている。

あらすじ:清水山城では、正月を迎える準備一色で男女を問わず忙しなく動き回っていた。そんな中で朽木稙綱は、喧騒から逃げる様に1人櫓台へと赴いていく。櫓台から覗く雪景色を眺めながら、自身の今までの人生を…同年代でありライバル心を抱いていた六角定頼と孫である朽木基綱の事を考えていた。

老雄〜毛利元就〜

地べたに頭を擦り付けながらも、最後は毛利を一大勢力にまで作り上げた男「毛利元就」。この短編は本編第3巻副題「謀神」時において、そして遺言である「毛利は天下を望まない」この言葉に隠された思いを描いた物語となっている。

あらすじ:いかなる手段を取っても勝つ、そこに善も悪もない、勝って生き残る事こそ重要。その乱世の掟を躊躇わずに取る事ができる男「朽木基綱」。それに比べて、周囲に何かと頼って決断できない毛利家現当主。

元就は地べたに頭を付けながらも、毛利を大きくしていったという自負がある。しかし、現在両家を率いる当主を比べ、将来の毛利の行く末に不安と悔しさを感じてしまい…。

老雄〜島津貴久〜

戦国時代に琉球と関わりがあった島津家先代当主「島津貴久」。この短編は、本編第4巻で朽木基綱が一条家を通して琉球との交易を目論んだ際の島津家側の物語になっている。

あらすじ:58歳になった島津貴久は、乱世を生き抜き最後を畳の上で安らかに迎えられる事に満足感を抱いていた。そんな彼の下に息子である義久が訪ねて来て、一つの相談事を告げられる。それは島津が琉球との交易で利益を得ている利権に割り込んで来る「朽木家」という存在についてだった。

貴久は琉球に対して高圧的になって来た島津の現状、そしてそれを打開したい琉球の思惑、一大勢力になった朽木の琉球交易への関わり、全ての流れに「ある危機感」を抱き…。

その他の短編

老雄編として以上の5人の物語が描かれている。本作品はそれだけに留まらず、野良田の戦いでの六角家の出来事や、本作ヒロインであり主人公の妻でもある小夜の物語など、本編を読んだ人しか楽しめないであろうストーリーが多数収録されている。

電子版書籍特典SS「選択」

本編のIFストーリーを描いている「異伝 淡海乃海 羽林、乱世を翔る」ではがっつり登場しているが、本編では全く出番が無かった人物、足利義輝の母「慶寿院」が登場する物語が収録されている。

慶寿院が義輝と「詩」の嫁入り先への相談をしているショートストーリーになっており、その場面では義輝が詩を主人公の嫁にしようとする思惑が書かれている。

 

終わりに

外伝集になっているからか本編版よりもページ数が少ない。内容自体は、本編の物語を補足する様な物になっているため、読者としては読み応えのある作品には仕上がっている。

しかし、web版で掲載されている「外伝 焼き討ち」や書籍版で収録されている「老雄 朽木稙綱」の外伝なども再収録されているので、両方を読み込んでいる読者にとってはさらにボリューム感が少なく感じてしまうかもしれない。

それでも、本編第1巻〜2巻の朽木家との深い関わりがあった六角家の物語がより補完されているので、淡海乃海「六角編」を好きな人にはたまらないだろう。

書籍版「淡海乃海」第一巻

もし主人公が朽木の当主にならなかったら…そんなIFを描いた「異伝:淡海乃海 羽林、乱世を翔る」